著名な先生の心理カウンセリングでも効果がない私はダメ人間?
これまで、様々な心理療法(心理カウンセリング、心理セラピー)を体験してきた私。
あるとき、著名な先生による心理カウンセリングを受ける機会があったのですが、効果が感じられませんでした。
当時は、「私がダメな人間だからだ」と、激しく落ち込みました。
でも、そんな体験を振り返り、「著名な先生の心理カウンセリングを受けたのに、効果が感じられなかった理由」について、勝手に考察してみました。
著名な大学教授の勉強会に誘われる
著名な大学教授の心理カウンセリングを受けたのは、30代の初めごろ。
私自身、なかなかにツライ状況にあったときでした。
教育分析※1を受けたものの、「あなたは病理が深い」と言われ、2年で打ち切られる。
集中内観※2に行き、母への怒りは消えたものの、自分自身を激しく否定する思いが強まってしまう。
職場で、いじめにあう。
地獄の業火に焼かれるようなツライ思いにさいなまれ、本当に苦しくて、苦しくて。
救いを求めて、あがいていたとき。
臨床心理士の資格をもつ知り合いから、著名な大学教授(A教授)の勉強会に誘われました。
長年続いている勉強会で、紹介者がいないと参加できないところ。
その勉強会の講師をしているのは、臨床心理学の業界でも著名なA教授。
家族療法をはじめとする、様々な心理療法の権威。
大学で教鞭をとると同時に、実践もしている、スゴイ方。
A教授の書かれた著書が、何冊もありました。
しかも、その勉強会では、A教授がカウンセラーとなり、参加者からクライエント(相談をする人)を募って、心理カウンセリングの実演を行ってくれるというのです。
A教授の個人カウンセリングを受けるとなると、1時間で50,000円以上もかかるそう。
1回10,000円の参加費だけで、心理カウンセリングを受けられるなんて、夢のようです。
「勉強会でA教授の心理カウンセリングを1回受けただけで、人生が変わったの」
そう言われた私は、ふたつ返事で、勉強会に参加させていただきました。
※1:「教育分析」とは、心理カウンセラーを目指す人が、自身の心の問題を解決し、心理カウンセラーとして、とどこおりなく働けるように、自分自身も心理カウンセリングを受けることを言います。
※2:「集中内観」とは、6泊7日で、自分自身と身近な人との関係を見つめ直し、自己理解を深める心理療法です。
※「教育分析」が2年で打ち切られたことについては、こちら。
※「集中内観」で、母への怒りが消えたものの、自分を否定する思いが強まったことについては、こちら。
※職場でいじめにあったことについては、こちら。
素晴らしい体験をしたが何も変わらない
A教授の勉強会にて、A教授がカウンセラーとなり、参加者の前で、心理カウンセリングの実演を行うことになったとき。
私は、意気揚々と、クライエントに名乗り出ました。
困っていること、取り上げたいことについて尋ねられた私は、両親のことを話します。
幼いころから、母が私のことを頭ごなしに叱りつけ、ダメ人間扱いするのが、つらかったこと。
父からは、このところ、実家へ帰って結婚するよう言われ、見合いをさせられているが、母の近くで暮らすと、あれこれ口を出されそうで、不安であること。
A教授は、優しい笑顔で、私の話に耳を傾けてくださいました。
そして、目の前にあるイスに、父や母が座っていると想定して、やり取りをするよう指示されます。
両親が私のことを思ってくれているのは分かる。
でも、私には、それが負担である。
そんなことが、あぶり出されていきました。
あなたの両親と、あなたの関係を、イメージしてみましょう。
A教授に言われ、私は、目をつぶって、イメージしてみました。
私の両方の足首に、太い鎖が巻き付いている。
太い鎖の先に、右足のほうには父が、左足の方には母が、各々つかまっている。
私は、羽ばたいて、上空へ飛んでいこうとするけれど。
太い鎖の先にぶら下がっている父と母が重いため、上空で身動きがとれず、苦しい。
A教授の指示に従い、私自身の思いや感覚を、じっくりと感じていきます。
A教授に、「あなたは、どうしたいですか?」と問われたとき。
楽になりたい。
A教授が、太い鎖を足首から外すことを提案します。
私は、一瞬、「外したくない」と思いますが、口にはしませんでした。
A教授が、「親の束縛から解放される方向」を望んでいるように感じたからです。
私は、A教授の提案に従い、太い鎖や両親の姿をイメージしながら、実際に手を動かし、足首から太い鎖を外していくと。
自由になった喜びと、父と母を勝手に見捨てるような罪悪感が、わき出てきます。
罪悪感はなかったことにして、自由になった喜びを感じることにシフトすると。
涙がボロボロこぼれて、嗚咽するほどになりました。
あなたのご両親は、あなたのことを大切に思っています。
でも、その思いが、あなたにとっては、重荷になることもあります。
ご両親のことは、もう許しましょう。
あなたは、自由です。
あなたの生きたいように生きることができます。
A教授の言うことを、私も復唱します。
私は、父と母を許します。
私は、自由です。
私は、私の生きたいように生きることができます。
私自身は、両親から解放されたような喜びと感動に満たされ、涙が止まりませんでした。
私がクライエントとなった心理カウンセリングは、参加者の心にも響いたようです。
終了後、参加者から、「素晴らしかったです。あなたが大きく変わる場面に立ち会えて、とても感動しました」と、口々に声をかけられました。
私も、「これで、私自身が大きく変わる。心軽やかな日々が送れる」と、ものすごく期待したのですが。
私には、何の変化も訪れない。
自分自身を否定する日々が続くだけ。
心が軽やかになったとは思えない。
これは、私がダメな人間だからだ。
激しく落ち込みました。
その後、何回か、A教授の勉強会に参加したものの。
私に何の変化も起きていないということは、言えずじまい。
そのうち、勉強会をサポートしていた人たちの事情で、勉強会が開催されなくなり、私も足が遠のいてしまいました。
心理カウンセリングに効果が感じられない理由
その後、20年近くにわたり、自己探究を続け、生きづらさが小さくなくなってきた私。
改めて、著名な先生による心理カウンセリングでも効果が得られなかった理由について、考えてみました。
相手が望むような行動を取る
1つめの理由。
心理カウンセリングが、自分のためのものではなく、相手のためのものになっていたから。
私の根底には、幼少期の体験から、「母に嫌われたら、見捨てられて、死んでしまう」という恐怖があります。
そのため、「母にも、みなにも、嫌われないような人にならないといけない」と信じ込んでいるのです。
嫌われないために、母や周りの人の様子を伺い、相手が望むような行動を取る。
それは、幼い私が生き延びるための手段でした。
ほぼ無意識のうちに、相手が望むような行動を取ってしまいます。
特に、「相手が自分より上の人間」と思うと、発動しやすくなるんですよ。
あろうことか、心理カウンセリングでも、それをやってしまった~。
A教授の望む結果を勝手に予測し、それに沿った流れを選んだ私。
自分の思いをないがしろにしているんですから、効果が得られないのは当たり前です。
ひと筋縄ではいかない心の構造
2つめの理由。
私自身が、ひと筋縄ではいかない、心の構造をもっているから。
A教授は、専門家として、必要なガイドをしてくださったと思います。
ですが、私は、自分でも驚くほどに、心の中にある幼い部分、つまり、「内なる子ども」が頑強なのです。
大人の部分が、両親から自由になり、自立したいと思っている一方。
「内なる子ども」は、両親、特に、母に異常なほどに執着し、母から認められることを切望している。
あり得ないほどのあきらめの悪さが、私の根底にある。
A教授による心理カウンセリングの中で、私は、両親のしがらみを断ち切ることに成功しました。
しかし、心の内側では、「内なる子ども」が、いったん外した太い鎖を、再び自身で握りしめ、元の状態に戻っているのです。
だから、何の変化も起こらない。
A教授による心理カウンセリングに問題があると言うよりは。
1回しか心理カウンセリングを行えなかったために、救われなかったのです。
「内なる子ども」の執着の裏にある、「母に認められたい」という切なる願い。
切なる願いの底にある、「母に認められなければ、死んでしまう」という、幼い私自身の恐怖。
「内なる子ども」の切なる願いをかなえるために、私自身を責め、叱咤激励するメカニズムがあること。
「内なる子ども」が願うような形で、母に認められることはないという現実。
そうしたことに、1つずつ、丁寧に、向き合っていかなければいけないのですよ。
私のようなタイプの場合はね~。
その後、面倒くさい私に、じっくり向き合ってくれる「ハコミセラピー」に出合いました。
「ハコミセラピー」に関わる人たちが、専門家として偉ぶった雰囲気がないので、本音が言いやすい。
そのお陰で、自分の課題に1つ1つ、丁寧に向き合っていくことができました。
あきらめなければ、自分を合った心理カウンセリングや方法が、見つかるんですね。
※「ハコミセラピー」については、こちら。
今回は、著名な先生が行った心理カウンセリングでも、効果が得られなかったことについて、お伝えしました。
じっくり考えると、自分らしさというか、自分の特徴があぶり出されるものだなあと感じています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。