アンガーマネジメント① 怒りをおさめる「ストレスマネジメント」
「アンガーマネジメント(anger management)」は、文字通り、怒りをマネジメント(コントロール)する方法。
ちなみに、「アンガーマネジメント」に含まれているのは、以下の3つの要素。
①ストレスマネジメント
今回は、「怒り」について説明するとともに、「ストレスマネジメント」についてお伝えします。
「怒り」は大切な感情なんだけど…
生きものは、危機的な状況にぶちあたったとき、3つの反応をすると言われています。
①闘争(fight):闘う
②逃走(flight):逃げる
③凍結(freeze):固まる
「相手と闘えば、命を守ることができる」と感じたとき、「恐怖」などといったネガティブな感情が、「怒り」に変わり、「闘う(fight)」といった行動があらわれます。
生きのびるために、「怒り」が重要な役割を果たしているのです。
たとえば、卵を温めている親鳥が、卵をヘビにねらわれたとき。
- 親鳥は、「ヘビに卵を食べられてしまったら、大変!」と、恐怖を感じる。
- 「恐怖」⇒「怒り」⇒「パワー」に変えて、ヘビとたたかう。
- 無事、ヘビを追いはらう。
「怒り」がなければ、大切な卵をヘビに食べられて、おしまいです。
ところが、現代の人間社会では、「怒り」が活躍する場が限られています。
平和で安心できる社会であるほど、闘って命を守らなくちゃいけない場面って、ほとんどない。
逆に、「怒り」を前面に出すと、損をすることのほうが多い…。
それで、「怒り」を、コントロールすることが、重視されるようになったきたのです。
「ストレスマネジメント」の効果
「ストレスマネジメント」とは、イラッとしたときに、6秒間、怒りをしのぐための方法です。
この「6秒間」とは、「感じる脳(大脳辺縁系)」が活性化して「怒り」が生まれたあと、「考える脳(大脳新皮質)」が働くまでの時間です。
「考える脳(大脳新皮質)」が働き出すと、「今、怒ると損をする」など、合理的な考えが生まれます。
そして、「感じる脳(大脳辺縁系)」の働きを弱め、「怒り」をおさえるのです。
そのため、イラッとしてからの「6秒間」を持ちこたえることができれば、「怒り」は、それほど大きくなりません。
「ストレスマネジメント」の具体的な方法
「ストレスマネジメント」では、基本的に、「考える脳(大脳新皮質)」を活性化させます。
それに加えて、イラッとした場面をくり返し思い出すことを防ぎ、「感じる脳(大脳辺縁系)」を鎮めます。
教科書的な方法の中には、「こんな方法、だれも使わないよ」というものがゴロゴロあるので、使えそうな方法だけピックアップしました。
深呼吸
「怒り」を身体の外に吐き出すようなイメージで、ゆっくりと口から息を吐きます。
そして、新鮮な空気が身体の隅々に行き渡るようなイメージで、ゆっくりと鼻から息を吸います。
呼吸にだけ、意識を向けるのです。
その場から離れる
イラッとしたときに、その場から離れ、気分転換をしながら、一人で静かに過ごします。
嫌な場面をくり返し思い出すことは、「怒り」が高まってしまうので、NG。
ただ、職場など、オフィシャルな場所で急に立ち去ると、変な感じになるので…。
「ちょっとお手洗いに」などと伝え、トイレの個室で気持ちを鎮めるというのはいかがでしょう。
別なことをして気をそらす
別なことを考えたり、したりすることで、イラッとした場面から気をそらします。
時と場合が許すのであれば、集中できる活動、没頭できる活動をすることがおススメです。
たとえば、
- 仕事や勉強など目の前の作業に集中する
- 趣味に没頭する
- 掃除をする
- 目の前にあるペンをじっと観察して、心の中で描写する
- 指をすり合わせて、その感触を味わう
- 楽しい出来事を思い出す
事前に、どんなことをするか、決めておくと安心です。
自分に言葉をかける
心の中で、元気が出るような言葉、気持ちがやわらぐような言葉を、自分にかけていきます。
たとえば、
- 大丈夫
- きっとうまくいく
- 図太くいこう
- 何とかなる
- 私はよくやっている
- 私は頑張っている
いきなりだと言葉が思いつかないので、事前に「イラッとしたら、この言葉をかけよう」と決めておくといいですね。
身体の緊張をほぐす
イラッとしたときに、その場を離れることができる状況だったら、身体の緊張をほぐす方法がおススメです。
たとえば、
- 冷たい水で顔を洗う
- 冷たい水を飲む
- 笑顔を作る
- ソファや床の上などに大の字になって寝転ぶ
- ストレッチなど軽い運動をする
私は、夜にイライラすることが多いので、さっさとお風呂に入ります。
「ストレスマネジメント」の限界
「ストレスマネジメント」にも、限界があります。
限界を作り出してしまう原因の1つは、「グルグル思考」。
「グルグル思考」とは、嫌な場面をくり返しくり返し思い出すことです。
思い出すほどに、「怒り」がどんどんふくれ上がっていき、収拾がつかなくなります。
私も、夫に対してイラッとすると、嫌な場面をくり返し思い出し、ついでに、過去の嫌なことまで思い出していました。
そうなると、「ストレスマネジメント」の方法を実践しても、「グルグル思考」の圧倒的なパワーに負けちゃいます。
「グルグル思考」を手放して、頭の中を空っぽにすることが、いかに難しいか・・・。
「グルグル思考」を手放すポイントは、「グルグル思考」をやめるのではなく、「グルグル思考」の代わりに別なことをする、です。
先ほど書いた「ストレスマネジメント」の具体的な方法ではうまくいかない場合は、「グルグル思考」の代わりに頭の中を占拠してくれるものを探します。
熱中できるものがおススメです。
そして、徹底的に実践し、頭の中から「グルグル思考」がなくなった身体の感覚を味わいます。
身体に覚えさせる感じです。
私自身、いろいろな方法を試してみたところ、「慈悲の瞑想」のフレーズをひたすらに唱えると、「グルグル思考」が消えることを発見!
1年間、「慈悲の瞑想」を唱え続けていたら、絶望的な体験で傷ついた心でさえ、整ってきました。
そして、何より、「ストレスマネジメント」の限界は、「ストレスマネジメント」に取り組まないこと。
何もやらなければ、何の結果も生まれませんから。
今回は、「アンガーマネジメント」のうち、「ストレスマネジメント」についてお伝えしました。
「ストレスマネジメント」は、簡単な方法なのですが、実践を継続することが難しい。
でも、続けていけば、効果が現れます。
めげずに取り組んでくださいね。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。