自分を傷つける根本原因に働きかけるセルフケア
苦しくなるのは、「自分で自分を傷つける」というからくりがあるから。
私の場合、そのからくりが強固すぎて、日常生活では振り回されるばかりでした。
試行錯誤の末、「自分を傷つける根本原因に働きかける」というセルフケアにたどり着きました。
私の経験を交えて、お伝えします。
自分で自分を傷つける私
「仕事でやらかしてしまった!」という思いで、胸が苦しくなりました。
とはいっても、失敗とは言えないような、些細な出来事です。
スクールカウンセラーとして勤務している学校で、ある担任に「生徒と面談したい」と提案したら。
その担任が、困った表情をして、「必要ない」と答えただけ。
頭では、「大したことじゃない」と判断できます。
それなのに、腹の底から、自分を責める言葉が、じわじわとわき出てくるのです。
間違った提案をした
専門家として使えない
やっぱりダメ人間
実は、苦しくなるときの、いつものパターンなんですよね~。
些細な出来事に大げさに反応し、自分を責め抜いていく。
ところが、翌朝、目覚めると、気分がスッキリ!
何が違うのだろうと、自分をチェックすると。
自分を責める言葉が、自分の中から消えているのです。
改めて、苦しい思いをするのは、自分で自分を傷つけているからだと痛感しました。
苦しさの根本原因は「コア・ビリーフ」
ほんのちょっとでも、自分の思い通りにいかないと、自分を責めて責めて責めまくる私。
その都度、地獄の業火で焼かれるような苦しみを味わいます。
そんな私の心の奥深くに届き、苦しさの根源を示してくれたのが、「ハコミセラピー」でした。
「ハコミセラピー」は、「マインドフルネス」を使って、自分自身を見つめていくセラピーです。
「マインドフルネス」とは、ゆっくりと深呼吸をしながら、目をつぶり、今ここで起きていることに意識を向けていくこと。
瞑想状態とも言えます。
「マインドフルネス」の状態になると、覚醒した意識がゆっくりと鎮静化していき、無意識にあるものが立ち現れてきます。
「普段の生活では意識していないけれど、大切なもの」が、浮かび上がってくるのです。
そして、私は、「ハコミセラピー」のセッション(個人セラピー)を通して、少しずつ、自分を責める根源に近づいていきました。
苦しさの根源にあったもの。
「母に嫌われたら、生きていくことができない」という「コア・ビリーフ」でした。
親子関係や育った環境などによって編み出された考え、つまり、信じ込みを「ビリーフ」と言います。
そうした「ビリーフ」のうち、根源に位置しており、幼少期に編み出されたものが、「コア・ビリーフ」です。
幼少期を生き延びるために生まれた「コア・ビリーフ」
私の「コア・ビリーフ」は、おそらく、私が3~4歳の頃に編み出したもの。
当時、都会で会社員として働いていた父は、実家の事情のために仕事を辞め、田舎に戻ることになりました。
義理の両親(私にとっては父方祖父母)と同居することになった母は、嫁姑問題に苦しみます。
精神的に衰弱した母。
何らかの精神疾患を発症したのでしょう。
おっちょこちょいで、おちゃらけている私を見ると、無性に腹が立ったみたい。
些細なことで私を頭ごなしに叱りつけ、イライラすると八つ当たりするようになりました。
そんな日々が続くうち、幼い私は、「母に嫌われたら、生きていくことができない」と考えるようになったのです。
実際、3~4歳の幼児が、親から嫌われ、見捨てられたら、命の危機にさらされます。
「母に嫌われたら、生きていくことができない」という「コア・ビリーフ」が形成されると。
「母から好かれて、生き延びたい」という、切なる願いが生まれます。
私がみんなから好かれる人間であれば。
私が人より秀でた才能をもつ人間であれば。
私は母から好かれるはず!
そうなれるよう頑張ろう!
「母に好かれるような立派な人間になるんだ!」という思いが、幼い私の命綱となったのです。
「コア・ビリーフ」は、悪者ではありません。
幼い子どもが、「自分を取り囲む小さな世界で生き抜くために欠かせない」と信じ込んだ「考え」なのです。
そして、成長し、自分を取り囲む世界が大きくなると、幼い頃に信じ込んだ「考え」は実情に合わなくなります。
私だって、大人になれば、自分で生活の糧を得ることができるようになり、母に嫌われても命を失うことはありません。
それなのに、幼い頃から握りしめていた「コア・ビリーフ」が手放せない。
幼い私にとっての命綱だったので、心の奥深くに根付いていて、はがれない。
そのため、成人して以後も、「母から好かれるような立派な人間」になれていない自分に気づくと、「コア・ビリーフ」が発動!
死の恐怖にさらされ、ものすごく恐ろしくなる。
そのため、立派な人間になることができない自分自身を嘆いてしまうのです。
自分の苦しみに自分で対処する
勤務校にて、失敗とは言えないような出来事があった翌日。
目覚めたときは、さわやかな気分でいたものの。
次第に、自分自身を嘆く言葉が再燃し、自分で自分を傷つけるネガティブ・スパイラルが発動していきます。
そこで、セルフケアを行うことにしました。
「ハコミセラピー」の手法を使った、イメージワークのような感じです。
そして、苦しさの根本原因である、「コア・ビリーフ」、つまり、「母に嫌われる怖れ」に焦点を当てていきます。
自分の中の小さな子どもをイメージする
まず、苦しくなるきっかけとなった場面を思い出します。
私の場合は、「仕事でやらかしてしまった!」という場面をイメージ。
すると、じわじわと、自分を責め、嘆く言葉がわき出てくる。
みじめな気持ち、悲しい気持ちも、わきあがってくる。
感情がわきあがると、「コア・ビリーフ」を作り出した、自分の中にいる小さな子どもがイメージしやすくなります。
私の場合は、「なおちゃん」と呼ぶ、3~4歳の女の子。
「母に嫌われる怖れ」を抱いている、幼い私の姿が浮かんでくる。
自分の中の小さな子どもの声を聞く
自分の中にいる小さな子どもの声。
特に、「コア・ビリーフ」から出ている声、に焦点を当てていきます。
私の場合は、「なおちゃん」に、「母に嫌われる怖れ」にまつわる、思いのたけを吐き出してもらう。
才能がない私は、ママに嫌われちゃう。
こんなに頑張っているのに、才能がないなんて、悲しすぎる。
ママに嫌われて死んじゃうのが怖い。
実際に、声に出して言ってみると、「なおちゃん」の気持ちに入り込みやすくなります。
感情が高ぶると、私は、涙がこぼれますが、そのほうが効果的な気がします。
自分の中の小さな子どもの気持ちに共感する
自分の中の小さな子どもの気持ちに、大人の自分が、共感を示すような声をかけていきます。
特に、「コア・ビリーフ」に焦点を当てた共感だと、ピンポイントで響きます。
私の場合、まず、「なおちゃん」の横に、大人の私が立つ姿をイメージ。
そして、大人の私から、「なおちゃん」に言葉をかけていく。
自分には能力がないんだって思うと、ガッカリしちゃうね。
頑張ってるのに能力がアップしないと、悲しくなっちゃうね。
ママに嫌われたら死んじゃうかもって思うと、怖くなっちゃうね。
「なおちゃん」は、悲しい思いをしたときに、誰にも言えず、ガマンしていたはず。
幼い子どもにとって、悲しい思いを一人で抱え、一人で対処するのは、とてもツライこと。
だから、気持ちに寄り添ってもらえると、「分かってもらえた」と感じ、気持ちが楽になります。
自分の中の小さな子どもに優しい言葉をかける
自分の中の小さな子どもの気持ちが収まってきたら。
「コア・ビリーフ」に焦点を当てた、優しい言葉をかけていきます。
私の場合、「母に嫌われる怖れ」に関係する、優しい言葉をかけてみる。
ママに好かれて、生き延びるために、頑張っているんだね。
怖くても、諦めずに頑張るなんて、たくましいね。
なおちゃんは、そのままでも、なかなかに大した奴だと思うよ。
小さな子どもの頑張りを励まし、その子のもつ良さを伝えます。
すると、「自分は自分らしく、そのままでいても良いんだ」という感覚が、身体中に広がっていきます。
一連の作業は、ほんの数分。
根本原因が分かっていると、ピンポイントの対処が可能になるため、セルフケアがしやすくなります。
気持ちがスーッと楽になった私。
数日後、再度、例の担任に「やっぱり、あの生徒と面談したいんですよね」と持ちかけることができました。
苦しい思いを収めるには、「コア・ビリーフ」を作り出した、自分の中の小さな子どもに対処することが必要です。
しかも、「コア・ビリーフ」が特定できると、ピンポイントでの対処ができるので、セルフケアがしやすくなります。
とはいえ、私の場合、「コア・ビリーフ」を特定するまで、数年を要しているので、そこまでが長いかも……。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。