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壊れた母を守りたかった小さな私【私が自分を生きるまで⑭】

2024年3月21日

母から否定的な言葉をかけられて育ち、「自分は要らない人間だ」と信じ込んで生きてきた私。

「自分を生きる」ために、努力を重ねていきます。

その過程の中で、「そのままの私でも、母から愛される」という、新しい体験を得た私。

その後、「小さな私」が抱いていた、別の願いにも気づきました。

 

新しい体験を否定する声

2019年の3月。

私は、「ハコミセラピー」のスペシャル・ワークショップに参加しました。

「ハコミセラピー」とは、「マインドフルネス」をベースに、心と身体の両方に働きかけるセラピーです。
「マインドフルネス」とは、ゆっくりと深呼吸をして、目をつぶり、「今、この瞬間」に起きていることに意識を向けていくことです。

 

「そのままの私でも、母から愛される」という体験を得た私。

しばらくは、感動に包まれるような状態となりました。

 

※母から愛されていい存在だと気づいた体験は、こちら。

 

ところが、1時間も経つと。

新しい体験を否定する考えが、わきあがってきたのです。

私に呪いをかけてくるような声として聞こえる言葉。

 

今の体験は、嘘っぱち。

たまたま、気分が盛り上がっただけ。

根も葉もないところから、架空の物語が出てきたに過ぎない。

 

それで、参加者全員の前で、それを伝えてみました。

 

私は、「母から愛されてもいい存在だ」という体験をした。

でも、その後、「私が体験したことは、嘘っぱち」という考えが浮かんできた。

とても混乱している。

 

すると、ワークショップの講師をしていた、ジョージア・マービンさんが、コメントをくれました。

彼女は、カナダから来日した、「ハコミセラピー」のシニアトレーナーです。

 

しっかり現実を見なさい。

あなたの体験は、周囲の人たちも見ていた本物(リアル)。

嘘っぱちの要素はない。

 

ですが、私は、ジョージアさんの言葉を素直に受けとめられません。

呪いの言葉は、エスカレートしていきます。

 

ジョージアさんは、他の参加者には優しい言葉をかけるのに、私には厳しい言葉。

ダメな人間は、みんなから嫌われて当然。

私は、ジョージアさんに嫌われている。

嫌われ者には、ムチしか飛んでこない。

 

「そのままの私でも、母から愛される」という天にも昇るような体験が、台無しになってしまいました。

 

壊れた母を守るために闘う私

 

スペシャル・ワークショップの数日後。

私は、ジョージア・マービンさんによる「公開個人セッション」を受けました。

「公開個人セッション」では、参加者全員が見守る前で、個人セッションのクライエント(相談者)になるのです。

 

私の順番が来ました。

緊張しながらも、母との関係に縛られている自分について話します。

 

ジョージアさんは、「何があると安心しますか」と私に尋ねてきました。

私が答えると、参加者をうまく配置して、私の心の中を表現していきます。

 

最終的に出来上がった構図は、

恐ろしい魔物におびえる、少女のような私の母。

母の隣には、勇ましい姿の女戦士。

女戦士は、鉄の鎧で身を固め、大きな刀を振り回して、魔物を切り裂いていく。

 

そして、私の中には、イメージが広がっていきます。

 

魔物は、母の不安や怖れ。

母が、不安や怖れを感じるたび、魔物は、無限にわいてくる。

女戦士は、母を守るために、不眠不休で、魔物と闘わなければならない。

しかも、この闘いに、終わりはない。

 

私の母は、気丈だし、とても賢い人です。

家事でも、仕事でも、やるべきことをしっかりこなしていました。

 

でも、母の心は、どこかで壊れてしまっていたのだ。

母は、行き場のない不安や怖れを、私にぶつけていた。

私は、母が好きだったから、母を助けたかった。

頑張って母を助けることで、母に「大好きだよ」と言ってほしかった。

だから、女戦士にみたいに、母を守りたかった。

 

幼い私に、そんな力なんか、ありません。

それなのに、母を守るために、女戦士の役割をとり、終わりのない闘いに足を踏み入れてしまったんですね。

ある意味、私は、母に取り込まれていたので、母から精神的に距離を取ることが難しかったのです。

そのことに初めて気づきました。

 

壊れた母との関係性から距離をとる

 

「公開個人セッション」が終わった直後から。

少女の姿をした母が、魔物のような形相になって、私に金切り声をあげるイメージが浮かんできました。

 

さっきのセッションは、いい加減で、嘘っぱち!

あんたは、あの女(ジョージアさん)に、だまされてる。

 

ほかの人(私以外に公開個人セッションを受けた2人)とは、ハグしたり、温かく微笑んだり。

それなのに、あんたとは、あっさりしたもの。

周りに人を配置したら、それでおしまいって、どうなの!

適当におこなわれたセッションなんて、何の意味もない!

 

私は、必死に反論します。

 

ジョージアさんは、プロフェッショナル。

だから、私に嫌な感情を抱いたとしても、最善のセラピーをするはず。

 

そう反論すると、少女の姿をした母は、ムンクの叫びみたいな形相に変貌。

私に対して、罵詈雑言を浴びせてきます。

 

あんたは、ママの言うことを信じないの!

あんな嘘っぱちセラピストのほうを信じるなんて。

だから、あんたは、バカで、何をやってもダメなのよ!

 

このまま、母に追いつめられたら、私は気がふれる。

 

そう思った私は、「ジョージアさんは、プロフェッショナル!!」と、心に刻んで。

母を守り、自分の心を守るためのイメージを展開します。

 

「魔物に襲われる!」と騒ぐ母。

襲いかかってくる魔物を大きな刀で斬り倒す、甲冑姿の女戦士。

私は、「女戦士さん、母を守ってください」と祈りをこめる。

そして、母と女戦士、私との間に、カーテンを引く。

次々とカーテンを引き、母と女戦士が、異次元に移っていく。

 

何重にもカーテンを引くうち。

母と女戦士の姿は、遠のいていき、ついに見えなくなりました。

私の心の中に、静穏が訪れます。

 

ジョージアさんとの「公開個人セッション」で、私と母の本当の関係性が見えてきました。

さまざまなストレスで、心が壊れてしまった母は、どこかで私に依存していた。

私も、母の要求に応えなければいけないと感じていた。

母の存在が、私の中に深く根づいているからこそ、私は私らしく生きることができず、母とほど良い距離をとることも難しい。

 

でも、母と私との関係性に気づいてから。

母との間に、ちょっとだけ距離が取れるようになりました。

そして、これまた、ちょっとだけ、心が軽やかになったのです。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

続きはこちら。母が私をくたす言葉を残して亡くなり、深い悲しみを自力で整えないといけなくなりました。


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