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親と同じ過ちをくり返してしまう「世代間連鎖」を断ち切りたい

2024年5月28日

親と同じ過ちをくり返してしまう負の連鎖は、「世代間連鎖」と呼ばれています。

私の場合、「母と同じことはしたくない」と思っていたのに、母と同じことをしている自分に気づきました。

「世代間連鎖」をどう捉え、どのように断ち切るか。

私の体験を交えてお伝えします。

 

私は悪い子、弟は良い子

 

母は、私と弟を比べて、私を叱りつけることがよくありました。

 

たとえば、私が朝寝坊すると、早起きした弟を引き合いに出して、私を叱ります。

まあ、どの家庭でもよくある光景かもしれませんが、私の母は言葉がキツイ。

 

ナオミみたいに、朝寝坊するぐうたらな子は、誰からも好かれない!

早起きできる○○(弟の名前)は結婚できても、ナオミと結婚するような人はいない!

ナオミは、みんなから嫌われて、孤独死するのよ!

 

1歳下の弟。

弟は賢い子だったので、私が怒られる様子をよく見ており、母が嫌がるようなことは、決してしません。

叱られるのは、私ばっかり。

 

そのため、幼い私は、母が弟だけを可愛がっても、それは当たり前だと思っていました。

弟が良い子で、私が悪い子であることは、火を見るよりも明らかだったからです。

 

私は、弟に嫉妬のような負の感情を抱くことはありませんでした。

ですが、私だけが叱られる状況は、悲しくて仕方ありません。

自分がダメな人間であることが、幼い私の心に刻印されていきました。

 

私が、悪い子だから、ママに嫌われるんだ。

いつか、弟みたいな良い子になって、私もママに可愛がられたい。

 

私なりに必死に努力しましたが、幼い私の切なる願いは、かなうことがありませんでした。

 

※母が亡くなる直前、弟を褒め、私を非難する言葉を遺したことについては、こちら。


 

母と同じことをしていた私

 

母にされて嫌だったことを息子にはしない。

 

30代半ばで結婚し、息子が生まれてから。

私は、そう心に決め、かなり気を遣って、息子に接していました。

 

幼い息子を感情的に怒ってしまったときは、冷静になってから謝る。

謝るときも、「お母さんは、仕事で嫌なことがあってイライラしていたから、必要以上に怒ってしまった」と、怒った理由を説明する。

そして、「仲直りしよう」と言って、幼い息子とハグをする。

 

その一方で、夫の言動に、はらわたが煮えくり返り、夫への罵倒がとまらない。

 

たしかに、私の夫は、とてもマイペースな人。

私が、仕事を続けながら、家事、育児もこなす、ワンオペの日々を送っていても、気づきもしない。

休日も楽しそうに自分のペースで過ごしている。

 

そんな夫を、私は「敵」と認識し、夫のささいな言動にイラっとするように。

そのうえ、「夫が悪いから、私が腹を立てるのは当たり前」と、自分を正当化していました。

 

そんなこんなで、家では夫とケンカばかり。

生きること自体がつらくなり、わらをもつかむ思いで、様々な心理療法を体験し、自分を見つめる機会を重ねていくと。

私は、母と同じことをしている自分に気づきました。

 

母が弟を可愛がっていたように、一人息子は目に入れても痛くないほどの溺愛ぶり。

母が私をうとましく感じていたように、夫の言動にイラつき、夫を罵倒する。

「母と同じことはしたくない」と思っていたのに、母と同じことをしているなんて。

 

私は、ひどくショックを受けました。

 

母から私に引き継がれた「世代間連鎖」

 

親から子へと引き継がれていく負の連鎖は、「世代間連鎖」と呼ばれています。

 

人は誰でも、親など身近な人との関係の中で、他者との関わりをはじめ、様々な振る舞いを学んでいきます。

そのため、幼いころに、親と同じような言動を取るのは、ごく自然なこと。

ですが、ほとんどの人が、成長の過程で自分の言動を自覚し、改めていくので、「世代間連鎖」は起こりません。

 

ところが、母から私へ、自覚されぬまま、引き継がれた行いがありました。

傍から見ると誤った行いでも、自身の心のバランスを保つメリットが潜んでいます。

ただし、怒りをぶつける相手の心が傷つくことには、全く無自覚のまま。

 

特定の人の前で良い人を演じ、「自分は良い人間。ダメな人間ではない」という感覚にひたる

私は、一人息子を可愛がることで、「良い母親としての自分」を確認し、安心を得ようとしていました。

 

自分にとって安心・安全な相手に怒りをぶつけると、少しだけ気が晴れる。

私は、夫に対して行き場のない怒りぶつけることで、自分で自分を攻撃する苦しみを避けようとしていました。

 

私自身の、そして、私の母の言動を振り返って、気づいたことがあります。

 

不適切な養育を受けた子どもは、精神的に未熟な部分を残したまま、大人になる。

精神的に未熟な部分が活性化しているときは、自分がしていることに無自覚になりやすい。

そのため、親にされて嫌だったことを、気かぬうちにくり返してしまう。

その負の連鎖が、世代を越えて受け継がれていく。

 

「世代間連鎖」を断ち切る

 

「世代間連鎖」を断ち切るためには、どうすれば良いのか。

 

私なりに、悪戦苦闘、試行錯誤して見出したのは、

自分のしていることを自覚すること。

自分の内側にある精神的に成熟した部分、冷静な部分とのつながりを強めること。

 

大人げないほど感情的になっている場合。

「自分の中にいる幼い子ども」、いわゆる、「インナーチャイルド」が、心身の指揮権を奪っています。

ある意味、「自分の中にいる幼い子ども」が暴走している状態で、精神的な未熟さが全開になっている。

しかも、度々、子どもが全開になる状態に陥っていれば、自身の言動に無自覚になるのは、当たり前。

 

ですが、ある程度の年齢になり、様々な経験を重ねていれば。

親から不適切な養育を受け、精神的に未熟な部分が残っているとしても、年齢相応に成熟している部分、冷静な部分が育っています。

そうじゃなければ、社会生活を送れませんから。

 

そのため、「自分の中にいる幼い子ども」以外の部分、つまり、「年齢相応に成熟した視点をもつ部分」とのつながりを強めれば、

自分を客観視し、自分のしていることを自覚することができる。

自分がもつ「世代間連鎖」について検討し、自分の言動を改善することもできる。

 

「年齢相応に成熟した視点をもつ部分」とのつながりを強化するために、手っ取り早い方法は。

自分に優しい言葉をかけること。

 

自分に優しい言葉をかけることで、「自分の中にいる幼い子ども」の暴走を鎮め、心身の指揮権を手放してもらいます。

でもね~、この作業、かなり手間がかかるんですよ。

 

私の場合。

心理療法などで、自分の内側にある「年齢相応に成熟した視点をもつ部分」とつながりをもつ機会が増えたことで、自分が母と同じことをしていると自覚することができました。

 

そして、セルフケアの一環として、次のようなことに取り組んでみました。

 

「自分の中にいる幼い子ども」が感情的になっているとき、その姿をありありとイメージし、言い分を聞き、言い分に共感するように、優しい言葉をかけていく。

その子の嘆きや怒りが鎮まったら、姿を見せ始めた「年齢相応に成熟した視点をもつ部分」と、やり取りする。

私は、自分の内側にある部分をキャラクター化して、名前をつけているので、名前を呼びかけながら、各々の意見を聞く。

頑張ったキャラクターたちが、良い仕事をしてくれたら、「やるじゃん。ありがとう」と声をかける。

 

「自分の中にいる幼い子ども」の嘆きをおさめ、「年齢相応に成熟した視点をもつ部分」とつながりをもつ機会を増やしていくと。

私自身、少しずつではありますが、一人息子を溺愛し、夫をないがしろにする言動が、緩和されていきました。

 

※自分の内側を複数のキャラクターとしてとらえると、自分の言動を理解しやすくなります。


※「自分の中にいる幼い子ども」に声をかけるときの具体的な手続きについては、こちらをご参照ください。

 

 

「世代間連鎖」を断ち切り、精神的に成熟するための第一歩は、「自覚すること」

そして、次に、「自分の中にいる幼い子どもに優しい言葉をかけること」

自分の中に受け入れがたい一面があることに気づくと、心がかなり痛みますが、まあ、それは生みの苦しみということで。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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