人気の記事


母の激烈な愛情を知る【私が自分を生きるまで⑰】 

2024年8月22日

母から否定的な言葉をかけられて育ち、「自分は要らない人間だ」と信じ込んで生きてきた私。

「自分を生きる」ために、努力を重ねていきます。

悪戦苦闘、試行錯誤の末。

私には受け取りがたい形ではあったものの、母が私に愛情を注いでくれていたと、知ることになりました。

 

母の最期の言葉に衝撃を受けながらも、心を整える

 

「ナオミは、バカで、のろまで、肝心な時に役に立たない」

それが、私に対する母の最期の言葉でした。

弟のことは褒めちぎり、妹の将来を案じていたのに、私だけ……。

 

小さい頃から失敗ばかりで、しょっちゅう母に怒られていた私。

だからこそ、「いつか母に認めてほしい」と思い、私なりに頑張ってきたのです。

母が亡くなっただけでも悲しいのに、私だけ否定されて終わるなんて、悲しすぎる。

そんな思いに凝り固まってしまいます。

 

とはいえ、日常生活を営んでいくために、ショックを引きずる訳にはいきません。

必死の思いで、自分の気持ちを整えていきました。

 

母の最期の言葉は、「だれかに認めてもらうのではなく、自分で自分を認めることが大切」という母からのメッセージだったんだ。

最終的に、そんな考えに落とし込み、心のバランスを整えたのです。

 

そして、自分を卑下しないよう、毎日、お風呂に入りながら、「慈悲の瞑想」の言葉を唱える。

努力を重ねた結果、母の死後の手続きも含め、日常生活をこなしていくことができました。

 

※母の最期の言葉を受けながら、何とか自分の心を整えた詳細については、こちら。

 

※「慈悲の瞑想」を毎日行ったことについては、こちら。

 

私を認めてくれる優しい母のイメージは、フィットしない

 

表面的には、滞りなく、日常生活を送ることができました。

 

ですが、

やっぱり、母に認めてほしかった!

自分で自分を認めることなんて、できない!

そんな思いが、じわじわと広がっていきます。

 

自分で自分を認めるために、母から与えられた試練を乗り越えるんだ!

そう自分に言い聞かせ、自分の思いを封じ込めました。

 

そんな折、私が所属しているハコミセラピーの団体(JHEN)で、スペシャル企画ワークショップが行われました。

カナダ人のシニアトレーナー、ジョージア・マービンさんをゲスト講師に迎えてのワークショップ。

 

「ハコミセラピー」とは、「マインドフルネス」をベースに、心と身体の両方に働きかけるセラピーです。
「マインドフルネス」とは、ゆっくりと深呼吸をして、目をつぶり、「今、この瞬間」に起きていることに意識を向けていくことです。

 

コロナ禍ということもあり、オンラインでの開催。

テーマは、「人との関係性」

 

ワークショップでは、「マインドフルネス」の状態になり、自分の中で起きてくることを、1つ1つ丁寧にとらえていきます。

身体の感覚、感情、考え、イメージ。

「マインドフルネス」の状態が深まったとき、ジョージアさんが、参加者に対して、次のような言葉をかけました。

 

あなたにとって大切な人が、あなたに近づいてきます。

そして、あなたに必要なものを与えます。

 

すると、私の中に、イメージが展開されました。

 

3~4歳くらいの私が、しゃがみこんでいる。

20代半ばの若い母が、私の後方から、ゆっくりと私に近づいてくる。

小さな私のとなりに座った母。

「ママは、なおちゃんのことが、大好きよ」

そんな風に言って、私の頭をなでてくれる。

 

小さな私が切望していた体験です。

私は、ずっと得られなかったものが手に入ったような喜びで、うちふるえます。

涙もこぼれます。

満たされた気持ちで、それからの日々を過ごしました。

 

ところが、1ヶ月も経たないうちに、私の中の批判的な部分が、ムクムクとふくれあがってきます。

そんなイメージは、嘘っぱち。

私の母が、そんな優しい言葉を言うはずがない。

私が求めている幻想に過ぎない。

 

ぬか喜びだったなあ。

そんな思いが駆け巡り、私を認め、優しく頭をなでてくれる母のイメージは、あっという間に効力を失いました。

 

母の激烈な愛情というイメージは、フィットした

 

踏ん張り、頑張り、ギリギリのところで、自分を保っていた私。

自分の心を保つために、さらなる秘策を得たい!

そんな思いから、「ハコミセラピー」以外の講座にも、意欲的に参加しました。

 

コロナ禍で、オンラインの講座が主流だった時期。

参加しやすかったこともあり、憑りつかれたように受講しまくりました。

 

自分や相手の強みを活かす講座。

無意識にアプローチして人生を変えるというセラピーの講座。

トラウマを治療する技法を学ぶ講座。

意欲的に生きることをサポートするコーチングの講座。

トラウマを糧として自分を生きるためのコーチングの講座。

 

正直なところ、得られるものは、ありませんでした。

 

それでも、諦めることなく、「自分にとって必要なものを追求し、心の平穏を得る」というセラピーの講座に参加。

2人組でセラピーの練習をする際、私のお相手の方が、「セラピストの資格をもっています。どんなものを出してきても、大丈夫ですよ」と、声をかけてくれました。

その言葉を聞いて、私の中にずっと閉じ込められていた「猛獣」が解き放たれます。

 

「あなたにとって、必要なものは?」という問いかけ。

私の中に、他の講座で出会った、感じの悪い参加者たちを、惨殺するイメージが展開される。

お相手の方は、驚愕の表情。

そして、「ちょっとお待ちください。主催者と話し合ってきます」を、くり返す。

私は、異常者扱いされているような心持ち。

 

お相手の方が、主催者の意見を聞いて、一生懸命に働きかけてくれますが、私の心は荒れ狂います。

最終的に、外国人の著名な講師(セラピスト)に、直接、セラピーをしてもらう、という展開になりました。

 

外国人のセラピストの誘導で、無意識を探っていくと、イメージが浮かんできました。

 

天空に浮かぶ大きな白い光の玉。

亡くなった母の魂です。

そこから、白い光の筋が流れ星のように流れ落ちてくる。

落ちてきた光が地面にぶつかると、ぶつかった地点が明るく輝き、母の声が聞こえてきます。

 

ナオミはだらしないから、一生結婚できずに孤独死する。

ママの言うことが聞けないなら、落ちるところまで落ちて、地獄を見なさい。

ナオミは、バカで、のろまで、肝心な時に役に立たない。

 

これまでは、押しつけがましくて、言葉がきつくて、言われると嫌だった言葉ばかり。

でも、地面にぶつかって弾け飛ぶ光と一緒に、言葉に込められた母の思いが伝わってくるのです。

 

ナオミには、ちゃんとした子になって、結婚して幸せになってほしい。

ママの言うことを聞いて、ツラい思いをせずに、幸せに暮らしてほしい。

ナオミを残して死ぬのは、心配でならない。

 

母の思いは、ものすごい数の流れ星となって、私の行く先々に降り注ぎます。

流れ星が落ちた地点が、次々と明るく輝いていく。

最終的に、光が地球全体を包み込むほどに。

 

ああ、母は私のことを、本当に大切に思ってくれていたんだ。

ただ、愛情が強すぎるのと、伝え方がハードだから、私には伝わりづらかったんだ。

流れ星や隕石に当たったら、相当痛いからね。

 

おりこうさんな私からではなく、私の中の「猛獣」から絞り出されたイメージ。

驚くほど、私の気持ちにフィットし、心の中に染みこんでいきました。

母の激烈な愛情が、リアルに感じられ、思わず、涙。

「私はこのままでいいんだ」という思いを、感じることができました。

 

 

「マインドフルネス」の状態になると、意識レベルが下がっていき、無意識に潜んでいるものが前面に出やすくなります。

今回は、「物事を理性的に捉えて処理しようとする私」「小さくて純粋な私」を押しのけて、「母の毒をくらいながらも、しぶとく生き抜いてきた、荒ぶる私」が、自分の心を保つために必要なものをつかみとった感じです。

心の問題の解決策は、人から与えられるものではなく、自分の中から出てくるものだと、痛感しました。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

続きはこちら。母の激烈な愛情に気づいたことで、父の愛情を素直に受け入れることができるようになりました。

 

※今回の記事は、天狼院書店のメディアグランプリに掲載された文章を、大幅に加筆修正したものです。

新着記事のお知らせを配信しています。フォローしてくださいね!