「その人らしさ」に触れることで、いつものパターンが崩れる【私が自分を生きるまで⑦】
母から否定的な言葉をかけられて育ち、「自分は要らない人間だ」と信じ込んで生きてきた私。
「自分を生きる」ために、努力を重ねていきます。
人と関わるのがツラくて、「ツライ思いをするところから離れ、二度と近づかない」というのが、いつものパターンだった私。
ところが、新しい体験によって、いつものパターンが崩れ去りました。
いつものパターンが出現する
苦しい思いを抜け出し、自分らしさを取り戻したいと切望していた私。
「ここなら、何とかなるはず!」という期待を胸に、「ハコミセラピー」Beingコースに参加しました。
※「ハコミセラピー」とは、「マインドフルネス」をベースに、心と身体の両方に働きかけるセラピーです。
※「マインドフルネス」とは、ゆっくりと深呼吸をして、目をつぶり、「今、この瞬間」に起きていることに意識を向けていくことです。
※「ハコミセラピー」Beingコースとは、「ハコミセラピー」の手法を使って、自分の中で起こる体験を重視し、自分の在り方を見つめるコースです。
ところが、「ハコミセラピー」Beingコースに、参加し始めて、早々から……。
私の心の内面に存在する、ある部分が、猛烈な勢いで、私を責め立ててきました。
人とうまく関われないとき。
やるべきタスクを、うまくこなせないとき。
私は、この叱責してくる部分を、心の中にいるキャラクターの1人ととらえ、「タカハシさん」と名づけています。
「タカハシさん」は、私がいかにダメな人間であるかを、しつこいほどに言及してきました。
日常生活で起きていることが、「ハコミセラピー」Beingコースにおいて、スケールアップして現れた感じです。
「ハコミセラピー」Beingコースに参加して、5日目。
とうとう、私は、「ハコミセラピー」のワークに、参加することができなくなりました。
自分を叱責する声に追いつめられ、ツラいし、苦しい。
身動きが取れなくなり、座布団の上にうずくまるのが、精一杯でした。
「ハコミセラピー」は、今日を最後にやめよう。
頃合いをみはからって、家へ帰ろう。
そんな風に考えていました。
自分で自分を責める。
そのことで、ツラくて、たまらなくなる。
やりきれなくなったときに、ツライ思いをするところから離れ、二度と近づかない。
日常生活でくり返されている、いつものパターンです。
参加者の号泣に救われる
座布団の上にうずくまり、じっとしていると。
ある参加者の女性が、大声をあげて泣いているのが聞こえてきた。
その女性は、ここ数ヶ月の間に、あいついでご両親を亡くされていました。
一緒に泣きたい!
突然、私の中に、ドワッと思いがわきあがってきます。
気がつくと、私は、その女性のそばに座り、一緒においおいと泣いていました。
泣いている女性と、ちょっとつながりたい感じも、出てきます。
相手の足の指先と私の足の指先をチョンとくっつけてみたら、すごく安心しました。
いきなり、親しくもない参加者がそばへ近寄り、足の指先をくっつけてきて、大泣きしている。
あり得ない状況ですが、“一緒に泣いていい”という、受容的な雰囲気があります。
近くにいたハコミ公認トレーナーの阿部優美さんも、私の足先にチョンと足先をくっつけてきました。
さらに安心します。
足先を二人とくっつけたまま、たくさんたくさん泣いたら。
「もうちょっとだけ、この場にいてみよう」という気持ちになりました。
参加者のいびきに癒される
参加者の号泣のお陰で、かろうじて、「ハコミセラピー」の会場にとどまることができた私。
ですが、引き続き、ワークには参加できません。
私の様子を見たからか、ハコミ公認トレーナーの阿部優美さんが、部屋を2つに分けました。
部屋の半分には、ワークに参加する人。
もう半分には、ワークに参加しない人。
私は、ワークに参加しないほうに、移動しました。
すると、私の心の中にいる批判的なキャラクター、「タカハシさん」が、グチグチ言い始めます。
- 心根のすばらしい人たちは、ツライ思いを抱えていても、ちゃんとワークに参加できて、どんどん改善していく。
- ワークにすら参加できないあなたは、本当にダメな人間。改善なんて、できるはずがない。
ワークに参加しないのは、私一人だけだと思っていました。
「ワークに参加できないようなダメ人間」は、どう見ても、私だけだからです。
ところが、私のほかに3~4名が、参加しないほうの部屋に移動してきました。
すると、私の心の中にいる批判的なキャラクター、「タカハシさん」が、勢いづきます。
- ほかの人は、ワークに参加したかったのに、初心者のあなたが不参加だから、同情してつきあってくれている。
- あなたは、ほかの人がワークに参加する機会を奪った、最低の人間。
私は、「タカハシさん」の批判に、打ちひしがれます。
ひざを抱えて、しょんぼりと座ることしかできません。
私以外の3~4名の参加者は、床に寝転がっています。
そのとき。
床に寝転んでいたある参加者の女性が、いびきをかき始めました。
なんと!
いびきをかいて、ガッツリ寝ている!
私がかわいそうだから、付きあったんじゃないのか!
本当に、ワークに参加するつもりがなかったんだ!
そう思うと、あんなにツラかった気持ちが、スーッとひいてなくなります。
ハコミ認定セラピストの女性が、「あなたのしたいことをしてみるのはどう?」と声をかけてくれました。
寝転がっている参加者の協力を得てもいいとのこと。
いつもなら、「タカハシさん」が、騒ぎ立てます。
「あなた一人のために、参加者の手をわずらわせて、プログラム以外のワークをしてもらうなんて、図々しい!」って。
ですが、いびきをかいて気持ちよさそうに寝ている女性を見て、度肝を抜かれたみたい。
「タカハシさん」が、静かになっています。
私は、寝転がっている参加者たちに、互いの足の指先をくっつけてもらいました。
そして、私もその輪の中に入って、「マインドフルネス」。
ゆっくりと深呼吸をしながら、目をつぶり、「今、この瞬間」に起きていることを感じていきます。
対人恐怖の症状で苦しんでいた私にとって、足の指先だけで人とつながる距離感は、とても心地よい。
「安心して人とつながる感触」というものを存分に味わいました。
「その人らしさ」が、心を解きほぐす
「ハコミセラピー」のワークの最中に、号泣していた女性、いびきをかいて寝ていた女性。
2人とも、「ハコミセラピー」のグループワークに、10年以上にわたり、参加してきた方たちです。
「ハコミセラピー」での体験を通して、「自分らしく在る」ということを、体現しています。
「その人らしく、そのままに存在する」という、参加者の「在りよう」。
あまりにも自然で、存在感がありすぎる、「その人らしさ」!
そのため、私の心の中にいる批判的なキャラクター、「タカハシさん」も、「その人らしさ」に見ほれてしまった!
しかも、仕組まれたものではない。
意表をつかれた「タカハシさん」は、私に対して、いつもの叱責を出しそびれてしまったのです。
「タカハシさん」が静かだと、私は動きやすくなります。
「自分らしく在る」ということは、その人自身にとっても大切なことです。
ですが、周りの人にも影響を与えるのだ、ということを痛感しました。
特に、私のように、自分で自分をしばっているタイプにとって。
一緒に過ごす人たちの「その人らしさ」は、最高の特効薬となりました。
意表をつくぐらいが、凝り固まった心には、効果的なんだなあと思いつつ……。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
続きはこちら。自分を責める考えの裏には「ポジティブな思い」がありました。