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しつこい自責の念を消す方法があった

2024年10月17日

どう取り組んでも、なかなか消えなかった「自分を責める内なる声」。

気長に付き合っていくしかないと腹をくくった矢先、簡単な方法であっさり消えてしまいました。

私の体験と、自責の念を消した方法について、お伝えします。

 

「自分を責める内なる声」に苦しむ日々

 

私の頭の中では、しょっちゅう、自責の念が渦巻いていました。

 

何かに取り組もうとするとき。

思い通りに事が運ばなかったとき。

 

不安を感じる要素が少しでもあれば、「自分を責める内なる声」が発動します。

いやはや、親しい友だちと過ごすときですら、心をくじくような言葉がわいてくるんですよ~。

  • 私のような人間と一緒にいるだけで、友だちは不快な気持ちになる。
  • 相手は、徳の高い人間だから、私のようなダメ人間とつきあってくれているだけ。
  • 私のようなクズは、どんなに努力をしても、そのうち、本性を見抜かれて、嫌われる。

 

しかも、自分から逃れることができない。

「自分を責める内なる声」は、どこまでもどこまでも、とことん私を追い詰める。

「自分を責める内なる声」がやむまで、私は、地獄の業火で焼かれるような苦しみを味わう。

 

あまりにも苦しいので、大学で心理学を学び、様々な心理療法を試し、奮闘すること、30年!

お陰で、生きることが随分と楽になってきました。

でも、自責の念は、しつこく付きまとい、なくなることはありませんでした。

 

もはや、気長に付き合っていくしかない。

 

そう腹をくくった矢先。

新たな事実を知ることとなりました。

 

※「自分を責める内なる声」に気長に付き合っていくしかないと腹をくくったのは、こちら。

 

「自分を責める内なる声」はフラッシュバックだった

 

児童精神科医の杉山登志郎先生によると、「自分を責める内なる声」の正体は、「フラッシュバック」の一種だとか(杉山、2021)。

 

「フラッシュバック」とは、一般的に、心の傷になるような出来事を体験した人が、その出来事を思い出すような刺激に触れた途端、そのときと同じ感情や身体の感覚を感じたり、実際に当時の光景が見えたりすることを言います。

 

たとえば、戦場での激戦の末、かろうじて生き残った兵士が、帰国後、クラッカーが弾ける音を聞いた途端、戦場で体験した恐怖がよみがえって身体が硬直し、味方が倒れていく姿を鮮明に思い出す、など。

 

ですが、子ども虐待の専門外来で、多くの子どもたちを診察し、治療してきた杉山先生(児童精神科医)は、従来考えられてきたより、「フラッシュバック」が広範囲にわたって現れることに気づいたそうです。

認知・思考的フラッシュバックとは、心理的虐待を受けて育った子どもが、成人した後も、何事かに取り組もうとすると、そのたびに、「どうせ自分はできない」「何をしても自分はダメな人間だ」という考えが浮かんでくる。これもまた、虐待者に押しつけられた思考の再体験である。

※杉山登志郎(2021)「テキストブック TSプロトコールー子ども虐待と複雑性PTSDへの簡易処理技法ー」日本評論社より抜粋

 

これって、私のことじゃない!?

 

私の母は、自分の思い通りにならないと、私をなじり、罵倒するような言葉を投げかけてきました。

たしかに、私に対する母の関わりは、不適切だったと言えます。

それに、「自分を責める内なる声」は、「私はダメ人間」という私自身の「ビリーフ(信じ込み)」の反映かと思っていたのですが。

 

まさか、「自分を責める内なる声」が、フラッシュバック(母の思考の再体験)だったとは。

そして、フラッシュバックが生じるぐらいの心理的虐待を受けていたとは。

 

新たな事実に衝撃を受け、目からウロコが落ちたあと。

ものは試しと、本に書かれていた「フラッシュバックを軽減させる治療法」のうち、簡単に取り組める「手動処理」を試してみました。

杉山先生が、複雑性トラウマの治療として発案した方法の1つです。

 

すると、その翌日。

仕事で些細なミスをしたのに、「自分を責める内なる声」が全く出てこない!

 

なんと、認知・思考的フラッシュバック、つまり、自責の念が、ぴたりと消えたのです!!

 

「手動処理」のやり方と注意点

 

「フラッシュバックを軽減させる治療法」の1つ、「手動処理」は、身体のいくつかの部位をタッピングするだけ。

フラッシュバックは、脳の過覚醒によって生じるので、タッピングによって、脳の神経回路を鎮めるようです。

 

ちなみに、「フラッシュバックを軽減させる治療法」は、主に医療機関で実施されます。

メインの治療法は、

①漢方薬を含む低用量の薬物処方

②パルサーという器具を用いて身体のいくつかの部位に交互刺激を与える治療(4~5回の通院が必要)

 

「手動処理」は、メインとなる治療を補助する役割を果たしているに過ぎません。

でも、私には、十分な効果がありました。

 

「手動処理」のやり方

腹の部位(乳頭の線を下に降ろして肋骨の辺縁の部位)を両手で交互に20~30回ほど、パタパタと軽く叩く。

⇒胸郭呼吸(胸をふくらませ、肩を持ち上げるようにして呼吸する)で深呼吸。

 

鎖骨の部位(鎖骨下部の腎のツボ)を交差した両手で、交互に20~30回ほど、パタパタと軽くたたく。

⇒胸郭呼吸で深呼吸。

 

首の部位(頸動脈の部位)を両手で交互に20~30回ほど、パタパタと軽く叩く。

⇒胸郭呼吸で深呼吸。

 

頭の部位(こめかみの部位)を交差した両手で、交互に15~20回ほど、優しくなでおろす。「自分はよくやっている。自分は逆境にも関わらずやれてきた。自分はこれからもやっていける。よしよし頑張っている」といった感じ、自分の頭をよしよしとなでているイメージで行う。

⇒胸郭呼吸で深呼吸。

 

「手動処理」の頻度

杉山先生は、診察の中で、必要に応じて「手動処理」の方法を教えているようです。

そのため、著書の中には、「手動処理」をセルフケアで行う場合の頻度について、詳細な記述はありませんでした。

「2週間のうちに、4~5回実施する」といった程度の記載のみ(杉山、2019)。

 

そこで、私の実践について、お伝えします。

 

「手動処理」の効果を実感してから、1週間ほどの間。

「自分を責める内なる声」が再燃することを怖れて、毎晩、「手動処理」を行っていました。

「再燃すると嫌だなあ」と思って、一日に5~6回、「手動処理」を行った日も。

これはちょっと、やり過ぎかもしれませんけどね。

 

2週間が過ぎる頃から。

ちょっとモヤっとした不快な気持ちが生じたときに。

「ボチボチやっとくか~」という感じで、数日おきに「手動処理」を行うようになりました。

 

ところが、1ヶ月が過ぎた頃。

偶然なのかもしれませんが、仕事で大きなミスをする、私を嫌っている人と顔を合わせる、といった状況が生じました。

すると、認知・思考的フラッシュバック、つまり、「自分を責める内なる声」が、じわ~っと再燃してくるではありませんか。

 

「やばい!戻ってしまった!」と焦りは感じたものの。

「手動処理」を行うと、フラッシュバックは鎮まっていきます。

そのため、毎日1回、「手動処理」を行うようにしました。

 

3~4ヶ月が過ぎると、認知・思考的フラッシュバックは、出ることがなくなっています。

 

「手動処理」の注意点

残念なことに、杉山先生は、セルフケアを推奨してはいません。

ただ、気軽に治療を受けられない人もいるだろうから……と、「フラッシュバックを軽減させる治療法」のやり方などを本に記載しているようです。

 

杉山先生によると、「手動処理」は、複雑性トラウマの治療法のうちで最も安全な方法とはいえ、人によっては、フラッシュバックが一時的に激しくなることもあるとか。

また、「トラウマ処理に対してセルフケアを行うとなると、重症度が高い場合には危険が大きく、厳に避けねばならない」との一文も。

 

セルフケアを実施するときの注意事項などについては、杉山先生の著書で確認してみてくださいね。

くれぐれも自己責任でお願いします。

 

セルフケアでフラッシュバックを消すにはタイミングが重要

 

「自分を責める内なる声」が消え、ホッとしたものの、釈然としない思いが残ります。

「手動処理」を行ったら、どんな人でも、フラッシュバックから解放されるのか。

 

杉山先生の「トラウマ治療」に関するワークショップ(2024)※ を受講したところ。

「TS(トラウマティック・ストレス)プロトコール」、つまり、「フラッシュバックを軽減させる治療法」で改善しなかった人は、「途中でやめてしまった人」。

 

性的虐待を含めた、壮絶な虐待体験がある人は、深い人間不信があるために、定期的に医療機関に通院することが難しく、「TSプロトコール」の治療が全て終わらないうちに、通院しなくなってしまうとか。

また、「TSプロトコール」のメインの治療(パルサーによる刺激)を行うと、初めの1~2回は、フラッシュバックが強まる副作用が出るため、続けることが恐ろしくなる要素もあるようです。

 

いずれにしても、虐待体験による傷つきが大きい人は、「手動処理」だと、効果が出づらいばかりか、危険かもしれません。

 

金剛出版主催ワークショップ「誰でもできるトラウマ臨床」 講師:杉山登志朗先生(2024)

 

それから、本でも、ワークショップでも、「手動処理」を行っても効果が見られない人、に関するコメントはありませんでした。

まあ、あくまでも、補助的な方法なので、そこまで重要視されていないのでしょうね。

 

そこで、私は、「虐待体験があっても、仕事などを含めた日常生活がなんとか送れている人」という前提のもと。

親しい人たちの意見を聞いたり、自分自身の体験を振り返ったりしながら考え、勝手ながら、次のような結論にいたりました。

 

セルフケアで「手動処理」を行って、フラッシュバックがなくなるかどうかは、その人次第。

そして、セルフケアの「手動処理」によって、フラッシュバックがなくならない人は、以下の条件を備えているのではないか。

  • 虐待者が自身の親である場合、親と心理的な距離を取ることが難しい。
  • つまり、親は親、自分は自分と、線引きして考えることが難しい。
  • 言い方を変えれば、「親に愛されたい」という願望が強い。

 

「母に愛されたい」と切望していた頃の私だったら。

母から押しつけられた思考(フラッシュバック)が、母から授かったギフトのように感じられ、「手動処理」を試しても、フラッシュバックがなくならなかったという気がしています。

 

実際、「母に愛されたい」と願ってやまない時期に、「一瞬で悩みを消す方法」を試したら、具合が悪くなりましたからね。

ですが、自分の内側を見つめていくうちに、母に愛されなくてもしぶとく生きている私自身に気づきました。

そんなタイミングで、「手動処理」を試したので、フラッシュバックがなくなったと感じています。

 

※「一瞬で悩みを消す方法」については、こちら。

 

※母に愛されなくてもしぶとく生きている私自身に気づいたのは、こちら。

 

 

今回は、複雑性トラウマの治療として紹介されていた簡単な方法で、「自分を責める内なる声」が消えたことについてお伝えしました。

「自分を責める内なる声」に苦しんでいるあなた。

あくまでも自己責任とはなりますが、試してみてはいかがでしょうか。

 

※参考文献

杉山登志郎(2019)「発達性トラウマ障害と複雑性PTSDの治療」誠信書房

杉山登志郎(2021)「テキストブック TSプロトコールー子ども虐待と複雑性PTSDへの簡易処理技法ー」日本評論社

 

その後、仕事で大きなミスをしでかし、「手動処理」を行っても、「自分を責める内なる声」がおさまらなくなりました。

「手動処理は効果がないのか」とガッカリしつつ、その正体を探っていったら、なんと、別の出どころを発見!

いやはや、自責の念の根本にあるものは、1つだけではないんですね。

 

※認知・思考的フラッシュバック以外にも、自責の念を発するものがあったことについては、こちら。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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