アンガーマネジメント③ 心の健康と対人関係を向上させる「アサーション」
「アサーション」は、怒りをコントロールするための方法、「アンガーマネジメント」に含まれる要素の1つです。
ちなみに、「アンガーマネジメント」の要素は、以下の3つ。
③アサーション
今回は、怒りをコントロールして、心の健康に役立つだけでなく、対人関係も改善する、「アサーション」について、お伝えします。
「アサーション」とは?
「アサーション(assertion)」とは、「さわやかな自己主張」のこと。
自分の気持ちを率直に伝えつつ、相手の意見も聞き入れる、双方向コミュニケーションの在り方です。
自分の意見を表現するときのパターンは、大きく3つに分けられます。
引っ込み思案
自分の気持ちや考えを言葉ではめったに表現しない。
イライラしても、相手には何も言わず、ガマンする。
攻撃的な押しつけ
自己主張はするが、相手の気持ちや人権を踏みにじる。
怒りをぶちまけ、相手を責める。
アサーション
自分の言いたいことは言うが、相手の意見にも耳を傾ける。
相手には、正直に自分の気持ちを伝える。
どのパターンで自己表現をするかは、相手や状況によって違ってきます。
ちなみに、私の場合、かつては、「引っ込み思案」がメインでしたが、夫に対しては、「攻撃的な押しつけ」が暴走していました。
「アサーション」の使い方
「Iメッセージ」
「アサーション」は、基本的に「Iメッセージ」を使います。
「I」、つまり、「わたし」を主語にしてメッセージを発信するのです。
たとえば、夫がうるさく話しかけてくるのが、うっとうしい場合。
「(あなたは)うるさい!(あなたは)黙れ!」と言うのは、「Youメッセージ」。
相手(あなた)を主語にする「Youメッセージ」は、「攻撃的な押しつけ」タイプが使いがち。
相手の土俵に踏み込んで、物申すので、相手に嫌な思いをさせるだけです。
「わたしは、今日、疲れているから、あなたが話しかけてくると、聞くゆとりがなくて、ツラクなる」と言うのが、「Iメッセージ」。
相手の土俵には踏み込まず、自分の土俵で物申しているだけなので、相手にこちらの意見が伝わりやすくなります。
「引っ込み思案」タイプは、自分の本音を隠すことで、「攻撃的な押しつけ」タイプは、相手のせいにすることで、自分を守っています。
「Iメッセージ」を使うと、自分の感情を、自分で引き受けることに繋がるので、抵抗を感じるかも。
でも、練習あるのみです!
「アサーション」の具体的な手順
「アサーション」で意見を伝えるときは、次のような手順で、話を組み立てていきます。
①状況の説明:実際に起きた、具体的で客観的な事実や状況を伝える
②感情の表明:自分がどう感じているか(感情・気持ち)を伝える
③要求や提案:相手にしてほしいこと、お願いしたいことを伝える
④相手の反応への準備:相手が要求を受け入れた時、または、受け入れない時の対応を準備しておく
ポイントは、「感情の表明」で、「怒り」のもとになっている「ネガティブな感情」を伝えること。
悲しい、怖い、悔しい、切ない、心配、ツライ、などなど。
こうした「ネガティブな感情」こそ、率直な本音です。
たとえば、中学生の息子が宿題をやらずにゲームで遊んでいるときの「アサーション」は、こんな感じ。
①状況の説明:「今、宿題をやらないで、ゲームをしているでしょう」
②感情の表明:「宿題をやらないで学校へ行ったら、先生に怒られてコワイ思いをするんじゃないか、勉強が遅れてツライ思いをするんじゃないかって、お母さん(わたし)は心配なの」
③要求や提案:「宿題をやってから、ゲームをしてほしいんだけど」
④相手の反応への準備:息子『分かった』⇒「お願いを聞いてくれて、ありがとう」/息子『・・・(無視)』⇒①~③の手順でまた意見を伝える
「アサーション」の効果と限界
「アサーション」の効果
心の健康度がアップする
「アサーション」を通して、ネガティブな感情があることに気づき、認め、表現すると、「怒り」を含めた感情のコントロールがしやすくなります。
そのため、心の健康度がアップします。
「対人関係療法」という精神療法では、うつ病患者が家族と話すときに、「わたし」を主語にして、「感情」を伝えるよう指導することで、うつ病を改善しているのです。
私も、夫や息子に対して「アサーション」を実践したところ。
「ガッカリした」「ツライ」と、感情を表現すると、一瞬、その感情におおわれて苦しくなるのですが、その後、スッキリ!
感情は、認めて、表現するほどに、扱いやすくなっていきます。
対人関係がスムーズになる
「アサーション」を使うと、イライラする相手との関係が改善していきます。
関係改善のポイントは、「感情の表明」。
私がどんな感情を抱こうが、それは私の自由。
だから、相手の領域をおびやかすことがない。
私の場合、「感情の表明」を意識して伝えるようにしたら、息子や夫も、わりと私の意見を聞き入れてくれるようになりました。
相手が意見を受け入れてくれると、私も相手の意見が素直に聞けるようになります。
互いにやり取りすることが増え、相手の事情が分かってくるつれ、イライラすることが減りました。
「アサーション」の限界
いつも使えるとは限らない
イラッとしたときに、冷静に自分の言いたいことを考えて、相手に伝えるのは、至難の業。
私の場合は、夫にぶちギレると、「アサーション」なんて、どこかへ吹っ飛んでしまいます。
「すっごく不愉快!」など、ひたすらに「感情の表明」をしたうえで、夫を責めまくる。
まあ、冷静になって、謝りたくなったら謝るようにはしてますが、それもご愛敬ということで。
ひと言では終わらない
相手に言うことを聞いてほしいとき、ひと言では終わりません。
双方向のコミュニケーションなので、こちらが物申せば、相手も主張をしてきます。
正直、面倒くさいのですが、相手の意見が聞けるメリットもあるので、トントンかもしれません。
相手や状況によっては使えない
相手や状況によっては、「アサーション」を使わないほうがいい場合があります。
人の意見を聞くゆとりがない人に対して、あるいは、自由な自己主張が許されない状況では、「アサーション」は使うだけ損です。
実は、「アサーション」には、「言わない自由」が含まれています。
相手や状況によっては、意見を言わないという選択をすることも、「アサーション」なのです。
今回は、「アサーション」についてお伝えしました。
意識して使うと、人間関係がスムーズになるだけでなく、心の健康度もアップします。
ぜひ、使えそうな相手や状況で、試してみてください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。