発達凸凹があってピントがずれちゃう場合のメカニズムと対処法
発達凸凹のある人が、ピントがずれた言動を取ってしまうメカニズムについて、あれこれ考えていった結果。
私は、「身の回りで起きていることを、情報としてキャッチすることが苦手なのではないか」という結論にいたりました。
情報収集の観点から、発達凸凹があるとピントがずれてしまう場合のメカニズムと対処法について、考えてみました。
※「発達凸凹」とは、発達障害の診断がつくほどではないものの、発達障害の特性があることを指します。
定型発達の人は情報が入りやすい
まず、「定型発達の人(発達障害をもっていない人)」が情報取集をおこなう装置を、「水そう」とイメージします。
定型発達の人の場合、身の周りで起きていることが、そちらに意識を向けていなくても、自然に「情報」として入っていくからです。
たとえば、定型発達の子どもが、遊んでいるとき。
お母さんが、お父さんに向かって、「使わない部屋の電気は消して」と言い、お父さんが「すまん、すまん」と言って電気を消すのを見聞きすると…。
子どもは、お母さんとお父さんのやり取りに意識を向けていた訳ではないのに、「使わない部屋の電気は消す」という「情報」をキャッチします。
同じようにして、周りの人たちが言っていることを聞き、していることを見ると、1つ1つの「情報」を自然にキャッチしていきます。
たとえば、
- 常識的と言われる振る舞い
- 人間関係を築き、維持するための方法
- 集団生活を快適に送るために必要なこと
などなど。
年齢が上がるにつれ、「情報」はたまっていき、かなりの量の「データ」に!
定型発達の人は、周りの人から直接に教わっていないことでも、蓄積した「データ」を使って、実践することができるようになります。
特に、人間関係の築き方、関わり方などは、蓄積した「データ」があるからこそ、うまく実践できるのです。
発達凸凹があると情報が入りづらい
そして、「発達障害」「発達凸凹」がある人が情報取集をおこなう装置を、「丸底フラスコ」とイメージします。
「丸底フラスコ」は、「水そう」に比べると口が極端にせまいので、「情報」が中に入りづらい構造になっています。
しかも、「丸底フラスコ」の口の向きによっては、「情報」がまったく入らないことさえあるのです。
「自閉スペクトラム症(ASD)」がある人の場合、興味やこだわりのある方向にしか、丸底フラスコの口が向かいません。
「注意欠陥・多動症(ADHD)」がある人の場合、あちこちに注意が移っていくので、丸底フラスコがコロコロと転がり、口の方向が定まりません。
そのため、「情報」をキャッチしそびれてしまうのです。
「発達凸凹」がある人は、年齢が上がるにつれ、キャッチできた「情報」や、「情報」が集まってできる「データ」は、偏っていきます。
興味や関心がある分野は、「○○博士」と言われるほどの「データ」が蓄積されています。
一方、興味や関心がない分野は、定型発達の人と比べると、「データ」の蓄積が極端に少ないという状況。
脳内に集まる「データ」の蓄積が少ないということは、状況を理解するとき、判断するときに、必要な材料が少ないということ。
「発達凸凹」がある人は、判断材料が少ないために、状況にふさわしい行動がとれない、理解や判断を間違えるなど、ピントがずれた言動をしてしまうのです。
発達凸凹がある人に、不足する「情報」を入れるポイント
「発達凸凹」がある人が、「知らない」ためにできないことがある場合。
発達障害をもっている人は、「丸底フラスコ」なので、その口をめがけて「情報」を入れる工夫をすれば、良いのです。
できれば、小さい頃から、必要な「情報」を入れていくことが望ましいです。
まずは、日常生活をおこなうのに必要だと思われる「情報」を入れていき、年齢が上がるにつれ、不足していると思われる「情報」を入れていきます。
「情報」を入れるために大切な要素は、以下の通り。
1対1の場面
子どもの名前を呼ぶ、肩をたたくなどして、注意を引いてから、必要な「情報」を提供します。
「丸底フラスコ」の口が、こちら側に向いたのを確認してから、「情報」を伝えるイメージです。
遠くから声をかけたり、集団場面で声をかけたりすると、自分に声をかけられているとは思わず、「丸底フラスコ」の口が、別な方向へ向いてしまいます。
楽しさ(モチベーション)
遊び感覚で、楽しく「情報」を提供しましょう。
「教え込む」感じだと、だんだんうんざりしてきて、「丸底フラスコ」の口が、別方向に向いてしまう、なんてことも。
リラックス&エンジョイの状態にあると、「丸底フラスコ」の動きが柔軟になります。
「情報」をキャッチしたら、ちょっとしたごほうびをあげ、モチベーションを上げるのも良いですね。
得意なチャンネル
発達障害がある人には、得意な「チャンネル」があります。
「チャンネル」とは、「情報」を入れるときに、キャッチしやすい感覚のことです。
たとえば、音で聞く(話して聞かせる)、目で見る(絵や図を見る、映像を見る)、体感覚で覚える(身体の動きで覚える、行動・習慣として定着させる)など。
いろいろなチャンネルを試して、「得意なチャンネル」を探してみましょう。
知能検査(発達検査)を受けて、「得意なチャンネル」を見つけることもできます。
くり返す
1回で「情報」が入ると思ってはいけません。
「情報」が定着し、「データ」になっていると感じるまで、くり返し、粘り強く「情報」を提供しましょう。
ほどほどでOK
完全に「情報」を入れ込もうとすると、教える側も、教えられる側も、疲れ果ててしまいます。
日常生活で大きな損をしない程度、また、命の危険がともなわない程度に必要な「データ」が蓄積されていれば、それでOKです。
同じような方法を使って、大人が、自分自身に足りない「情報」を入れていくこともできます。
その場合、「モチベーション」がカギ。
「この情報を入れると、こんな得がある」というように、自分のメリットに注目すると、モチベーションが上がります。
無理のない範囲で試してみましょう。
ピントがずれた行動を取る人がいても、「情報の収集が苦手なタイプなんだな」と考えて、温かく接してほしいです。
「なんでできないんだ!」と腹を立てるのではなく、「知らないんだね。じゃあ、教えましょう」というスタンスで。
ピントがずれてしまうことに悩んでいる人も、「知らないだけだから、知識を身につけよう」と思って臨んでくださいね。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。