新しい体験で「自分を否定する部分」がひるんだ【私が自分を生きるまで⑪】
母から否定的な言葉をかけられて育ち、「自分は要らない人間だ」と信じ込んで生きてきた私。
「自分を生きる」ために、努力を重ねていきます。
その過程の中で、自分のふがいなさを嘆き、自分を否定する部分が、新しい体験によってひるみ、一時的に消えるという体験をしました。
「自分を否定する部分」が苦しい思いを生む
「自分を否定する部分」は受け入れがたい
「苦しい思いを抜け出して、心軽やかな日々を送りたい!」と、切望していた私。
「ハコミセラピー」Beingコースに参加して、2年半~3年が経ち、自分の心の内面で起きていることが、随分と分かってきました。
※「ハコミセラピー」とは、「マインドフルネス」をベースに、心と身体の両方に働きかけるセラピーです。
※「マインドフルネス」とは、ゆっくりと深呼吸をして、目をつぶり、「今、この瞬間」に起きていることに意識を向けていくことです。
※「ハコミセラピー」Beingコースとは、「ハコミセラピー」の手法を使って、自分の中で起こる体験を重視し、自分の在り方を見つめるコースです。
自分を「否定する部分」は、私をより良くしようという、ポジティブな思いを持っている。
自分を「肯定する部分」は、自分を「否定する部分」を排除しようとはしていない。
頭では、分かっています。
でも、自分を「否定する部分」が出てくると、苦しくて、苦しくて、しかたない。
自分を否定する部分さえ、なくなってしまえば、もっと楽になれるのに!
そんな風に思ってしまいます。
「自分を否定する部分」が、特別な状況下で活性化していく
自分を「否定する部分」が、どうしても受け入れがたく、苦しんでいたとき。
私は、ハワイのモロカイ島で行われた、7泊8日の「ハコミ・リトリート」に参加しました。
※「リトリート」とは、仕事や家庭などの日常生活を離れ、自分だけの時間をもって、疲れを癒す方法のことです。
「ハコミ・リトリート」の主催者は、ドナ・マーチンさんとジョージア・マービンさん。
2人とも、「ハコミセラピー」シニアトレーナーの資格をもつ、カナダ人です。
日本語通訳がついて、7泊8日の日程。
参加者は、世界各国から集まり、全員で20数名、うち、日本人は、私も含めて9名でした。
朝から「ハコミセラピー」のグループワークをおこなって、自分の内側を見つめる。
三食の食事もみんなで一緒にとる。
ロッジで寝泊まりする。
特別な状況で生活していると、心の内側にあるものが、こわいほどにハッキリしてきます。
海外からの参加者が、好意的な態度で話しかけてくると……。
私の心の内面で、「苦しい思いをするときのパターン」が発動!
私は、心の内面で起こっていることを、理解しようと努めます。
※心の内面で起こっていることを、擬人化して考えるという記事は、こちら。
私の心の中にいる、指示的な年配女性キャラクター、「タカハシさん」が、久々に騒ぎ始めます。
- 好意をもってくれている人には、こちらから積極的に話しかけないといけない。
- 相手が関心を持つ内容を選んで、気のきいたことを言わないといけない。
- 相手に嫌な思いをさせるから、黙っていてはいけない。
「タカハシさん」のハードルが高めな指示に戸惑い、私は、動けなくなります。
すると、今度は、私の心の中にいる、嘆きと苦悩を専門とする女の子キャラクター、「きいちゃん」が苦しみ出します。
- 自分から積極的に話しかけることもできないなんて。
- 気のきいたことも、言えないなんて。
- 何も言えずに、黙っているなんて。
- やっぱり、私は、ほかの人とは違って、ダメな人間なのね。
とたんに対人恐怖の症状が出て、表情も、言動も、ギクシャク、ギクシャク。
「ハコミセラピー」のワークにも、参加しづらくなる。
恐怖におののく私を見ると、嘆きと苦悩のキャラクター、「きいちゃん」の苦しみが、強烈になっていきます。
- ほかの参加者は、私と一緒にワークをすることを、迷惑だと思っている。
- 私だけ、気づきが浅くて、使いものにならない。
- やっぱり、私は、ほかの人とは違って、ダメな人間なんだ。
「自分を否定する部分」が、活性化しまくります。
「苦しい思いをするときのパターン」が、ハッキリと浮かび上がってきました。
「自分を否定する部分」の考えとは、まったく逆の体験をする
私の心の中にいる、「きいちゃん」というキャラクター。
私が理想的な人間になっていないと、嘆き、苦しみます。
「きいちゃん」の「考え方のクセ(ビリーフ)」は、「私は、ほかの人とは違って、ダメな人間だ」というもの。
「ハコミ・リトリート」のグループワークに参加するうち。
私は、「考え方のクセ(ビリーフ)」の中に、どっぷりと沈んでいきます。
苦しくて、息がつまりそう。
そして、自分がダメな人間であることを他の人に知られないよう、押し黙り、気配を消していく。
それを打ち破ったのが、私の心の中にいる、元気な女の子のキャラクター、「なおちゃん」です。
人に知られたくないことを、みんなの前で言うと、これまでも新しいことが起こったじゃない。
また、やってみよう!
そう思った「なおちゃん」。
「ハコミ・リトリート」最終日の前日。
体験をシェアする時間に手をあげ、自分の内面で起こっていることを話しだします。
- 私は、自分のことを「ゴキブリ」のような人間だと思っている。
- 心の中に「きいちゃん」というキャラクターがいて、「私は、ほかの人とは違って、ダメな人間だ」と信じている。
- 「ハコミ・リトリート」に参加していても、自分だけが汚い存在で、みんなから嫌われていると思う。
- 日常生活でも同じことが起こっていて、いつもツライ。
すると、シニアトレーナーのドナ・マーチンさんが、言いました。
「自分がゴキブリのような存在だと思う人は手をあげて」
何を言ってるんだか。
そう思っているのは、私だけよ。
そんな風に思っていたのですが……。
な、なんと!
ほとんどの人が手をあげている!
それを見たドナさん。
「じゃあ、みんなで、ゴキブリダンスを踊りましょう!」
私も含めて、20名弱の参加者が立ち上がり、前の人の肩に手を置いて、大きな輪になります。
そして、「ラクラカーチャ」というメキシコ民謡を歌いながら、片足ずつ前方にリズミカルに出し、身体をゆすって、踊り出しました。
「ラクラカーチャ」とは、スペイン語で「ゴキブリ」のこと。
ひとしきり、「ゴキブリダンス」を踊ったあと。
海外からの参加者たちが、私に近寄ってきました。
「私も、あなたと同じ気持ちを抱いていて、ずっと苦しんでいた」
「一緒に踊れて良かった」
そして、いきなりのハグ。
「異国の人は、日本人とはまったく違った感性をもっている」と信じ込んでいた「きいちゃん」。
自分の考えをはるかに超えた体験に、あり得ないほどの衝撃を受け、真っ白になりました。
「自分を否定する部分」がひるみ、一時的に消える
「ハコミ・リトリート」のグループワークが、全て終了したとき。
はるばるハワイまで、お金と時間をかけてやってきたのに、特に得るものがなかったなあ。
そんな考えが、頭の中をよぎりました。
いきなり、私は、とてつもなく悲しくなり、涙が止まらなくなりました。
なんで泣いているのか、分からない状態になっても、涙が止まりません。
みんなの前で、声をあげて泣いているのに、「タカハシさん」も、「きいちゃん」も、何も言いません。
普段だったら、「タカハシさん」が、「人前で泣くなんて、恥ずかしい」と、ダメ出し。
「きいちゃん」が、「人前で泣いてる私は、大人げなくて、ダメな人間」と、嘆き苦しむのに。
「自分を否定する部分」の声が、聞こえてこず、心の中は、とっても静か。
だれに気兼ねすることもなく、私は、声をしゃくりあげて、小さな子どものように泣きました。
こんなに思う存分、泣いたことは、初めてでした。
文字通り、涙がかれるまで泣きつくしたら、気持ちがスッキリ。
これまでに味わったことがないほど、ハレバレとした気持ちになりました。
日本に帰国してから、「タカハシさん」も、「きいちゃん」も、日常生活で現れることはありませんでした。
つまり、「自分を否定する部分」が、新しい体験によってひるみ、消えてしまったのです。
自分が信じ込んでいる「ビリーフ(信じ込み)」とは、正反対の体験をすると、心の内面に大きな変容が起こるんですね。
私の体験は、自分でも、荒療治だと思います。
刺激が強すぎるので、正直、おすすめできません。
ですが、頭で考えすぎて、凝り固まっているとき。
「体験する」という方法は、凝り固まったパターンを打開するのに、効果的です。
いろいろな体験を重ねる人ほど、気づきが多いのもうなずけます。
とはいえ、数ヶ月ほど経つと、また、「自分を否定する部分」が主張を始めてきました。
まあ、ひるんで姿を消していたのは、一時的なものだったとはいえ、私にとっては大きな一歩でした。
「自分を否定する部分」が消えている間に、私は、さらなる新しい体験を得ることになります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
続きはこちら。自分を否定する部分がなくなったら、こんな事になってしまいました……。