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思春期の子どもに大切なのは、親との「ほど良い距離感」

2023年8月19日

スクールカウンセラーに相談される保護者のほとんどが、思春期のお子さんへの対応に頭を抱えています。

子どもが、親に反発し、親の言うことを聞かなくなった。

私が、保護者の方にお伝えし、自分でも実践しているのが、思春期の子どもと、「ほど良い距離をとる」です。

今回は、「ほど良い距離をとる」ための工夫について、お伝えします。

 

思春期の子どもの「反抗」は「自立」の表れ

 

思春期の子どもは、「反抗期」と言われます。

親への反抗は、小学校高学年ぐらいから始まり、中学生でピークを迎え、高校生になるとおさまっていく、というのが、よくあるパターンです。

 

子どもの「反抗」は、大人目線で見た表現です。

親や大人の言うことを聞かない。

大人から見れば、「反抗」です。

 

ですが、子ども目線で見れば、「自立」です。

子どもが「自分らしさ」を、精一杯に表現しているだけ。

そして、子どもが「自分らしさ」を表現できる力を、親が、育ててきたという証。

とはいえ、それまで、親の言うことを聞いていた子が、大声でわめき散らしたり、親を無視したりすると、親はとまどいます。

 

子どもに反抗されて、困っている親に共通しているのが、「子どもとの距離が近い」こと。

愛情ゆえだったり、子どもに苦手なことが多くて、どうしても手をかけざるを得なかったり。

あれこれ指示を出す、叱咤激励する、いろいろ尋ねる、注意する、叱る…。

 

子どもが、反抗的な態度を示してきたら。

だれが悪いのでもありません。

「親である私が愛情をかけて育ててきたから、自立する心が育ってきたんだな」と思いましょう。

親が自分自身を励ますところから始めると、子どもに関わるゆとりが生まれます。

 

「ほど良い距離」のイメージは、「池で泳ぐ子どもを見守る感じ」

 

思春期の子どもと「ほど良い距離」をとる、というイメージは、「池で泳ぐ子どもを見守る感じ」

私の中で、勝手にもっているイメージです。

ですが、保護者の評判が、わりと良いので、ご紹介します。

 

子どもが、池で泳いでいたら、好きに泳がせる。

泳ぎ方について、あれこれ言わない。

ただ、おぼれては困るので、少し離れたところに姿を隠して、子どもの様子を見守る。

 

子どもが、おぼれ始めたら、「手助けはいる?」と尋ねる。

「助けて!」と言われたら、浮き輪を投げ入れるなどして、助ける。

「大丈夫!」と言われたら、様子を見守る。

おぼれていて、今にも沈みそうだったら、「もう、これ以上は、見ていられない。助けるからね」と言って、助ける。

 

子どもを、構いすぎることも、放任することもない。

そんな距離感です。

 

「ほど良い距離感」を保ちながら、子どもに関わる

 

「イメージは分かったけど、具体的にどうするの?」

ごもっともです。

私の実体験を交えて、説明します。

 

基本的に、子どものやることを見守る

私の息子が、中2だったとき(2020年時点)。

ある意味、思春期、反抗期の真っ盛り

 

小学生までは、本当に素直で、優しい子でした。

ところが、中学生になると、別人のように変わってしまった!!

口数は、いきなり少なくなり、イライラしやすくなりました。

 

イライラしやすくなったのは、自立する心が育ってきたためでしょう。

でも、外的な要因も影響しています。

 

まず、中1の終わりから中2の初めにかけて、コロナウイルス感染拡大防止のため、学校が休校になりました。

感染が怖い息子は、休校中、家を出ることがない。

学校が再開されても、部活動は行われない。

ストレスを発散する場がなくなったのです。

 

次に、夫(父親)との約束。

「塾のテストで良い成績をとったら、ゲーミングPCを買ってもらう」というもの。

ゲーミングPCが、欲しくてたまらない息子。

とはいえ、勉強は、必要最低限しかやりません。

そのため、「塾のテストの成績が悪かったら、ゲーミングPCを買ってもらえない」と、不安になるようです。

 

 

夫(父親)が、勉強するよう声をかけると、キレて、大声で文句を言い、夫と激しい口論になります。

その後、「お父さんに嫌なことを言われたから、勉強する気がなくなった」、「どうせ、やってもダメだから」と、弱音をはきます。

 

私は、基本的に、勉強のことは言いません

息子が、PS4でゲームばかりしていても、自主的に勉強をしなくても、息子の好きなようにさせます。

やるべき宿題をやっていれば、それでいい、ぐらいに考えています。

 

ただ、塾のオンライン授業の際、息子が、リビングのテーブルにつっぷしていたとき。

「勉強が難しいなら、教えようか」と声をかけました。

息子が「自分でやる」といったら、「頑張ってね」と声をかけて去る。

息子が「教えて」と言ってきたときにだけ、勉強を教えました。

 

子どもが荒れたら、スルーする

ある日、息子に勉強を教えていたとき。

息子が、「分かんねぇ!!」と頭を抱え、自分の頭をバンバンたたき始めました

 

足をドスドス踏み鳴らす。

机をバンバンたたく。

英語の四文字言葉(NGワード)をさけぶ。

 

私は、見ていて、つらくなってしまいました。

あんたが、ゲームばっかりしていて、勉強しないからでしょ!

そんな言葉が、のどまで出かかってきます。

でも、ぐっと飲みこみます

 

深呼吸をしてから、

あなたの様子を見ていると、お母さんのほうがつらくなってしまう。

あなたが、勉強を教えてほしいと言うのなら、お母さんも気持ちを整えて、勉強を教える。

それとも、教えないほうがいい?

と尋ねました。

 

息子は、「教えなくていい」と言うので、私は、その場をサッと離れました。

 

親自身のメンタルを整える

ちょうど夜の時間だったので、私はお風呂に入りました。

でも、息子が、リビングで、床を踏み鳴らす音、机をたたく音、大声でさけぶ声が聞こえてきます。

 

息子を頭ごなしに叱りつけたい衝動にかられます。

でも、叱りつけても、デメリットしか見いだせない。

仕方がないので、気持ちを整えます

 

私にとって一番いい方法。

それは、息子を罵倒したくなるような「考え」を、頭の中から一掃すること。

「考えないようにする」というのは、不可能なので、代わりに別なことを考えます

 

私は、「慈悲の瞑想」を唱えることが、お気に入り。

お風呂に入りながら、「慈悲の瞑想」を唱えると、気持ちが静まっていきます。

 

そして、お風呂から上がったら、息子に「早く寝たほうがいいよ」と声をかけ、さっさと寝てしまいました。

睡眠を十分にとると、さらに、気持ちが整います。

 

「慈悲の瞑想」については、こちらの記事をどうぞ。

 

「Iメッセージ」を使う

子どもに伝えたいことがあるとき。

まず、お互いに冷静なときを選びます。

 

そして、「Iメッセージ」を使って、親の思いを伝えます。

「Iメッセージ」は、私を主語にして、自分の気持ちを伝える方法です。

 

息子が荒れた翌朝、リビングのテーブルに、まっぷたつに折れた鉛筆が転がっていました。

イライラした息子が、鉛筆をたたき折ったようです。

 

私は、深呼吸をして気持ちを整えから、起きてきた息子に話をします。

鉛筆が折れているのを見て、お母さんは、本当にガッカリした。

イライラして物に当たるほど、心がすさんだ人間に育ててしまったと思って、お母さんは、自分の責任を感じている。

今の状態が続くなら、お母さんは、つらすぎて、あなたを応援できない。

 

すると、息子は、答えます。

どうせ、俺は、バカだから。

テストの成績が悪かったら、ゲーミングPCを買ってもらえなくなる。

そうしたら、俺は病む。

 

私は、深呼吸をして、気持ちを整え、さらに、話をします。

たとえば、「世の中の道理」などを伝えるとき。

「くどくど伝えない」というのが、ポイントです。

 

お母さんは、勉強をやった時間と結果は、比例すると思う。

いい成績を取りたいなら、その分、勉強することが必要。

勉強しないで、悪い成績をとるのは、必然。

ただ、お母さんとしては、病んでしまったあなたを放っておくのは、つらすぎて、できない。

あなたが病んでいると思ったら、お母さんの判断で、メンタルクリニックか、集中内観へ連れていく。

専門機関へ連れていくことは、受け入れてほしい。

息子は、黙って聞いていました。

 

その後も、息子は、相変わらず、時間があれば、オンライン・ゲームをやっていました。

それでも、自主的に勉強をする時間が、ちょっとだけ増えていきます。

 

そして、ある日、塾のオンライン授業が、終わった後。

「俺、この分なら、塾のテストで、それなりの成績、取れるかも」と、明るく話しかけてきました。

 

受け身メインのコミュニケーションをとる

機嫌がいいとき、中学生の息子は、私にあれこれ話しかけてきます。

 

息子は、ゲーミングPCの機種、マウス、ヘッドセットについて、語る、語る……。

内容は、専門的すぎて、ほとんど分かりません。

それでも、「そうなんだ」「いいね」「すごいね」と、相づちを打ちながら、話を聞きます。

「楽しそうな息子の雰囲気を一緒に味わう」という感じで、話を聞いているのです。

 

大人だって、自分が興味のある話をしているとき、相手が熱心に聞いてくれたら、嬉しいですよね。

相手への信頼というか、好意が増します。

子どもなら、なおさらではないでしょうか。

 

子どもは、自分の興味があることに耳を傾けてくれる親に対して、信頼や好意を抱くようになります。

子どもが話しかけてくるときは、信頼関係を築くチャンス!

無理をしない範囲で、子どもの話を聞いてみましょう。

 

思春期の子どもに関わるのが難しいとき

思春期の子どもに接するとき。

何より、親が、自分自身のメンタルを整えることが、カギです。

 

思春期の子どもとの関係がこじれてしまう場合。

親が、自分の気持ちをコントロールしきれず、感情のままに怒っていることが、子どもの反発を強めています。

 

そして、頭ではわかっているものの、感情のままに怒ってしまうあなた。

致し方ない事情を抱えていますよね。

 

たとえば。

  • 配偶者が子育てに協力してくれず、一人で頑張っている。
  • 自分自身の親から、愛情を受けて育てられたと感じられずにいる。
  • 自分が大切にしている価値観を、子どもがないがしろにする。
  • 経済的に厳しい状況にある。
  • 仕事や人間関係で、大きなストレスを抱えている。

 

そんなときは、自分らしくいられる時間を大切にしましょう。

まずは、自分に甘く、自分に優しく。

ゆとりができてから、思春期の子どもに関れば良いのです。

 

私は、たくさんの致し方ない事情を抱えています。

正直なところ、息子をダメにするのではないかと、怖れを感じながら暮らしている。

 

息子へ関わる際も、試行錯誤の繰り返し。

自分の心を整える作業も、毎日、必死に重ねています。

心穏やかな日々を送りたいという願いもありますが、息子に迷惑をかけたくないという思いも強いのです。

 

 

息子は、塾のテストで良い成績を取り、中2の夏休みに念願のゲーミングPCを手に入れました。

超高性能のゲーミングPCを手に入れたことで、逆に、自分の実力のほどを痛感。

プロゲーマーになる夢を諦めたようです。

 

その後、勉強に励むようになり、大学付属の高校へ入学。

楽しい高校生活を送っています。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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