実感できなかった母の愛情を諦めきれない私がひねり出したもの
実の親から愛情を受けたと実感できないけれど、諦めきれずに苦悶する人がいます。
私もその一人。
親の愛情を実感できなかった「内なる子ども」を抱えた私が、「内なる子ども」の願いをかなえるための工夫をひねり出し、気持ちのざわつきをおさめたことについて、お伝えします。
気持ちがざわつくことの根底に「ビリーフ」がある
ほんのささいな出来事で、私の気持ちがざわつくとき、その根底には「ビリーフ」があります。
「ビリーフ」とは、幼少期の状況にもとづいて、自分自身や周りの人、そして、自分を取り巻く世界に対して生み出された見方や考え方のことです。
私の気持ちがざわつく、ほんのささいな出来事、その根底にある「ビリーフ」は、以下の通り。
- 一緒にお昼ご飯を食べに行きたかった相手が、別の人と出かけてしまう。
- 親しくやり取りしていた人が、別の人とより仲良くしている。
⇒ビリーフ:私は選ばれない
- 勉強会をしているときに、「〇〇さんの対応は良かった」と、別の人が褒められる。
- 研修会などで、別の人たちのグループができているのに、私と同じグループになる人が出てこない。
⇒ビリーフ:私には能力がない
そして、「ビリーフ」が生み出された、幼少期の家庭環境があります。
- 1歳下の弟は、本当にできの良い子で、母に可愛がられていた。
- 姉である私は、母が嫌がることを言ったり、やったりしてしまいがちで、母に怒られてばかり。
- 母は、私と弟を比較して、いかに私がダメな子であるかを、気が済むまで言い募っていた。
- 機嫌が悪いとき、母は弟には優しく話しかけるのに、私のことは気が済むまで無視した。
幼少期の家庭環境の中で、「私は(母から)選ばれない」「私は(弟と比べると)能力がない」、だから、「私は要らない子なんだ」といった「ビリーフ」がつちかわれていったのです。
とはいえ、「ビリーフ」が悪いのではありません。
幼い私は、母が間違ったことをしているとは思えず、自分を悪者にして、状況を理解しようとしただけ。
ただ、成長し、大人になった私の中に、幼少期に生み出した「ビリーフ」を握りしめた「内なる子ども(インナーチャイルド)」がいることで、支障が出ているのです。
親の愛情を得たいと願う「内なる子ども」
「ビリーフ」を緩めるためには、「内なる子ども」が「体験したかったのに得られなかったもの」を提供します。
幼少期の自分が望んでいたことをかなえるという「新しい体験」を提供すると、「内なる子ども」が安心し、「ビリーフ」にすがりつく必要が薄れていくからです。
日常生活で得た「新しい体験」で、「内なる子ども」が安心していく人たちがいます。
たとえば、親から得られなかった愛情を、学校の先生、友だち、恋人、配偶者から得るなど。
あるいは、自分で自分に優しい言葉をかけ、自分に愛情を注ぐなど。
提供した人が誰であろうと、「新しい体験」が得られることが、安心につながるのです。
日常生活の中で「新しい体験」を得る機会がなかった人は、心理カウンセリング(セラピー)などの場面で、カウンセラー(セラピスト)から、「新しい体験」を提供してもらうという方法もあります。
その方法を使って、自分で自分をケアすること(セルフケア)もできるでしょう。
他者から優しい言葉をかけたもらったり、自分でセルフケアを行ったりすることで、随分と気持ちが楽になります。
ところが、他者や自分自身から得た「新しい体験」に、納得できない人もいるのです。
「内なる子ども」が、実の親の愛に執着していると、「本物の親じゃないとダメ!」と騒ぎ出すのです。
執着が激しい場合、幼少期に実の親から得られなかったものは、当時の実の親が提供しなければ、気が済まない。
私も、実の母に対する執着が激しいタイプ。
本物の母とは、20代前半の母。
私が3~4歳だったころの母です。
そもそも、20代前半の母に会うこと自体、現実的には無理。
セラピー場面で、当時の母をイメージし、母のそばに信頼できる人を置いてみても、ダメ。
「亡くなって天国へ行った人は、神様になるから、どんな願いでもかなえてくれるよ」と言われても、ダメ。
どんな工夫を重ねても、「内なる子ども」が納得しません。
決して諦めないのです。
なかなかに深刻な家庭環境の中で育ち、高校卒業後は職場でのいじめに、結婚後は嫁姑問題に、晩年は精神疾患に苦しんだ母。
トラウマや苦しみにまみれた母が癒され、元気になり、自分の非を認め、私の「内なる子ども」の願いをかなえてくれるとは、どうしても思えないのに。
もちろん、私自身、自己探究を重ねる中で、母の愛を感じる体験もありました。
大人の私は感激しましたが、母の愛は激しすぎて、私の「内なる子ども」にはフィットしなかったのです。
※母の愛情に気づいたけれど、かなり激しいものだったことについては、こちら。
「内なる子ども」の願いをかなえる方法をひねり出す
母の愛を諦めきれない「内なる子ども」が納得するような形で、「新しい体験」をひねり出してみよう!
ものは試しと、自分一人で「内なる子ども」に対するワークを行ってみることにしました。
方法は、「ハコミセラピー」の手順を用いて行います。
「ハコミセラピー」とは、「マインドフルネス」をベースに、心と身体の両方に働きかけるセラピーのこと。
私は、視覚優位なタイプなので、イメージを用いた流れになりがちです。
まず、ゆっくりと深呼吸をして、目をつぶり、「今、この瞬間」に起きていることに意識を向けていく「マインドフルネス」の状態になる。
マインドフルネスの状態のまま、「私は選ばれない!私には能力がない!私はやっぱり要らない子なんだ!」と、嘆き悲しんでいる「内なる子ども」の存在を感じていく。
次に、私の母をイメージする。
トラウマや苦しみにまみれた母は、とてもではないが、「内なる子ども」に優しく接するゆとりはない。
そこで、「内なる子ども」の受けが良さそうな工夫をひねり出してみました。
亡くなった母を「聖水(生命の水)」につけ、全てのケガレを洗い流す。
母は生まれ変わったように美しく輝き、若々しく、全身から優しさがにじみ出ている。
若くてキレイな20代前半の母が、なおちゃん(内なる子ども)に近づき、なおちゃんの願いをかなえていく。
ママは、いろんなことがあって、心にたくさんのケガレがついていてね。
だから、なおちゃんに優しくできなかったの。
悲しい思いをさせて、本当にごめんね。
なおちゃん、大好きよ。
なおちゃんは、ママの宝物よ。
〇〇(弟の名前)より、なおちゃんのほうが大切だよ。
母は、優しく声をかけ、なおちゃんの頭をなでる。
添い寝をしたり、膝枕をしたり、抱きしめたりもしてくれる。
試しに取り組んでみたイメージワークでしたが、思いのほか、「内なる子ども」に響きまして。
嬉しい涙がボロボロこぼれ、喉がつまるような、胸が熱くなるような感じ。
しばらく、その感じを味わい、目を開けると、とってもスッキリ。
最近の気になる出来事を思い出しても、胸が痛みません。
「内なる子ども」が「新しい体験」を得ることで、「ビリーフ」が緩んだのです。
とはいっても、伸ばした折り紙に、まだ、折り目がついているような状態。
時間が経つと、また、元に戻ってしまうでしょう。
そのため、当時の母が「内なる子ども」に優しく接してくれるというこのイメージワークを、くり返し、くり返し行うことが必要となります。
セルフケアの1つとして、日常生活に組み込み、実践中です。
※母を聖水(命の水)で清める方法は、両親の死を受け入れるにいたったイメージワークから着想しました。
私のように、実の親に対する執着が強く、親からの愛を諦めることができないタイプの場合。
「内なる子ども」が納得する方法をひねり出し、その願いをかなえてあげれば良いのです。
その方法は、人それぞれ。
とはいえ、「内なる子ども」が安心すると、「ビリーフ」が緩み、気持ちのざわつきがおさまっていくことを実感しています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。