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退職を迫られた「旧人」が起死回生を果たしたのは

2023年8月19日

同僚から退職を迫られた私。

「新人」だったら、身の振り方を考えるゆとりがあります。

でも、既に十数年も仕事を続けている私は、どうすればいいのか……。

もがき、あがいた私が、まさかの起死回生を果たしたことについて、お伝えします。

 

同僚から退職を迫られた「旧人」の私

 

「あなたは、この仕事に向かない。別な仕事を探してほしい」

 

同僚から言われた言葉にショックを受けました。

とはいえ、「やっぱりか」という感じも……。

 

この勤務校では失敗続きでした。

私のふとした言動が、生徒や保護者、教職員の怒りを買ったり、傷つけたり。

「スクールカウンセラーとして、しっかり仕事をこなさなければ!」と思えば思うほど、ミスが重なります。

 

新人であれば、「この仕事は向かない」と考え、転職してもいいでしょう。

転職せずに、「経験を積めばいい」と前向きに考えることもできるでしょう。

 

残念ながら、当時の私は、心理カウンセラーとして働いて、15年。

とっくに新人の域を出た「旧人」です。

 

言い訳にしか過ぎないでしょうが、怠けていたわけではありません。

大学院を修了して以来、心理カウンセラーとして力をつけたいと思っていた私は、自己研鑽に励んできました。

時間の許す限り、心理カウンセリングのワークショップ、セミナー、研修会、学会に参加しまくってきたのです。

 

ところが、私の努力も虚しく、ある教員を怒らせてしまい、同僚のスクールカウンセラーと一緒に謝罪しなければならなくなってしまった……。

それで、ベテランの同僚から、冒頭の発言が出てきたのです。

 

その一件で、管理職からお叱りを受ける。

ウワサが広がり、冷たい態度を取ってくる教職員もいる。

文字通り、針のむしろ。

 

できることなら、辞めたい!

 

でも、夫は2年間の無職の末、安月給の契約社員になったばかり。

息子は小学校の低学年。

私が今の仕事を続ければ、安定した収入が得られる。

 

もし、あなたが同じような状況にあったとしたら、どうしますか。

転職しますか、それとも、同じ職場で仕事を続けますか。

 

管理職からクビを勧告されたわけではない。

今の仕事を続けるしかない!

 

そう思った私は、ビジネス系のセミナーに参加するようになりました。

脳の使い方を学び、能力を最大限に発揮できるようになれば、ひと皮むけるのではないかしら、という希望をこめて。

 

地獄で仏に出合い、自分に気づく

 

私の努力は実らず、仕事では相変わらず、情けないミスの連発。

本当に行き詰まってしまいました。

 

やっぱり私では、実力不足。

もう限界か……。

 

そう思ったとき。

 

「ハコミセラピー」という、聞いたこともない心理療法に出会います。

「これよ! これ!」と私の中の何かが叫んだので、思わず、学び始めてしまいました。

心理療法の技術を身につけるというより、私自身の課題を解決するために。

まさに、「地獄で仏」の心境です。

 

「ハコミセラピー」では、マインドフルネス(瞑想)を使って、今現在、自分に起きていることに注意を向けていきます。

今現在、起きていることに、マインド(心)を行き渡らせるから、マインドフルネス。

マインドフルネスの状態になると、あれこれ考えをめぐらす前頭葉の働きが弱くなり、普段は抑え込まれている感情や思いが浮かび上がってきます。

 

こんなに努力をしてきたのに、ミスばかりの私は、そもそも粗悪品なんだ。

 

母との関係が、私の自信のなさに影響を与えていることは分かっていました。

私だけを叱り、責め、弟や妹は可愛がった母。

 

これまでの自己研鑽の過程で、母に対する怒りはなくなっていたので、もう解決したと思っていました。

でも、私が私を許していないから、「失敗しちゃいけない!」と力んでしまって、仕事でミスを連発するんだろうな。

 

そう思った私は、勇気をふりしぼり、「ハコミセラピー」を学ぶ仲間の前で、マインドフルネスを通じて気づいたことを話すよう心がけました。

 

「私だけがダメ人間」って思ってしまう。

私一人だけが、ヘドロまみれの汚い沼にはまっている。

汚れた私が、天上の世界へのぼっていく輝かしい人々を見上げて、「いいなあ」とつぶやいている。

 

仲間たちは、批判することも、ジャッジすることもなく、静かに受け入れてくれました。

「私にも同じ気持ちがある」と言う人さえいます。

 

無意識に埋もれていた感情や思いが出てきたら、仲間たちに伝える。

それを受け入れてもらい、「そのままでいいんだよ」と声をかけてもらう。

小さい時にかけてほしかった言葉を、マインドフルネスの状態で聞くと、心の底にしみわたっていく。

 

そうしたやり取りをくり返すうちに、私は少しずつ私自身を受け入れることができるようになっていきました。

 

残念なところもあるけれど、私なりに頑張っているんだから、まあ、いいんじゃない。

 

肩の力が抜けていき、仕事をすることだけでなく、生きることが楽になっていきました。

 

まさかの起死回生を果たしたのは

 

そんな折、針のむしろの勤務校で、以前の私だったら尻込みするような難しい案件が舞い込んできました。

腹をくくって、私なりに考え、対応していく。

すると、生徒や教職員にも納得してもらえる着地点が見つかりました。

 

何より、冷静に対応している自分にビックリ!

思いがけず、起死回生を果たすことになりました。

 

大学院を修了して以来、ずっと指導を受けてきた大学教授からも、「最近、まともになってきたなあ」と、嬉しいお言葉。

以前は、「お前はバカか!」と叱られていたのに。

 

私の経験を振り返って、思うことがあります。

 

長年必死に努力しても実を結ばない「旧人」さんは、どこかで自分に「No」を出しているのかもしれません。

「自分はダメだ!」と自分にムチをふるうたびに、本来持っている力を発揮するゆとりが失われていきます。

ゆとりがなくなると、視野が狭くなり、ミスを連発する。

そして、ますます自信を失っていくという悪循環。

 

無理にポジティブ思考になろうとせず、自分に優しい言葉をかけてみてはどうでしょう。

 

頑張ってるよ。

よくやってるよ。

何とかなるよ。

 

ホッとすると、身体に入っていた余計な力が抜けていきます。

身体が楽になると、うまく発揮できなかった力が解放されていくかもしれません。

 

自分を叱咤激励したほうが、能力が発揮できるという人は、そのままでOKです。

でも、努力しても、自分を責めても、どうにもならない時は、やり方を変えてみてはいかがでしょう。

起死回生を果たせるかもしれません。

 

 

私は、ちょっと情けない自分を励ましながら、今もスクールカウンセラーを続けています。

同僚に退職を迫られたお陰で、大切なことに気づくことができました。

ピンチはチャンスとは、このことかもしれません。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

※今回の記事は、天狼院書店のメディアグランプリに掲載された文章に加筆修正したものです。


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