発達障害はどこからどこまでが発達障害なのか?
「発達障害」について、目にする機会が増えました。
でも、どこからが発達障害で、どこからが発達障害ではないと言えるの?
今回は、そんなあなたの疑問にお答えします。
発達障害はどこからどこまで?
「発達障害」とは、生まれつき脳の働きのバランスが悪いために、苦手なことがあり、生活に支障が出る状態のことです。
原因はハッキリしていません。
でも、脳の一部が働き過ぎる一方、別な部分はあまり働いていないことによって起こると言われています。
さて、発達障害は、どこからが発達障害で、どこからが発達障害ではないのでしょうか?
実は、あいまいです。
発達障害の特徴というのは、「とても強くある」から「まったくない」までのグラデーションになっています。
たとえば、発達障害の特徴がとても強い人を「黒」、発達障害の特徴がまったくない人を「白」とすると…。
黒と白の間に、グレーのグラデーションができます。
つまり、発達障害の特徴は、だれでももっているということなんです。
「濃い。薄い」の違いがあるだけ。
ちなみに、発達障害の特徴がまったくない人は、この世に存在しません。
みんな、グレーのグラデーションのどこかにいます。
ちょっと変わっている、個性が強い、アクが強い、天然。
そんな風に言われるあなたや、あなたの周りにいる人たちは、実は、やや濃い目のグレーです。
発達障害の診断基準は精神医学会の基準
みんなが発達障害の特徴をもっているんなら、発達障害って、だれがどうやって決めるの?
そう思っちゃいますよね。
ご心配なく。
医学的な診断基準があります。
病院などで主に使われている診断基準は、アメリカ精神医学会が出版している「DSM-5(精神疾患の診断基準・統計マニュアル 第5版)」です。
発達障害の診断がつくには、次の2つの条件を満たすことが必要です。
①発達障害に特徴的な要素をもっている。
②生活に支障が出ている。
ガンなどの病気だったら、「ガン細胞が発見された」という時点で、ガンと診断されます。
ところが、発達障害は、原因が特定されていないので、行動など、表に現れているもので判断せざるを得ません。
それで、精神医学会の権威たちは、診療の中での経験から、「生活に支障が出て困っていた人は、この程度の特徴をもっていた」というデータを集めていき、診断基準を作ったのです。
そのため、診断基準があったとしても、結局は、見えている行動で判断しないといけないので、どうしても主観が入ってしまいます。
たとえば、「ほかの人と関係を築くことが苦手」という特徴は、どの程度だと支障が出る状態で、どの程度だと大丈夫なのか?
そもそも、「生活に支障が出る」って、あいまいじゃない?
なので、同じ状態の人が、医療機関にかかったとき。
発達障害の診断がつくこともあれば、つかないこともある…。
なんだか、宙ぶらりんですね。
※「発達障害」については、こちらをどうぞ。
発達障害の診断があいまいになる理由
発達障害の診断があいまいになるのは、何と言っても、「発達障害の特徴はだれでももっている」というところにあります。
それ以外には、次の2つの理由があげられます。
環境との相性による
発達障害の特徴をもっていても、環境によって、支障が出ることもあれば、何の問題も出ないこともあります。
たとえば、他人と関わるのが苦手で、興味の偏りがある場合(自閉症スペクトラム症の特徴)。
専門職として、バリバリ働いて、業績を上げています。
ところが、子どものPTAとか、ママ友の輪に入ると、ギクシャクしちゃって、気がつけば孤立状態…。
たとえば、注意力が散漫なために、職場でミスをしてしまう場合(注意欠陥多動症の特徴)。
「気をつけてよ~」と言われながらも、大らかな雰囲気があると、特に問題は起こりません。
でも、「何をやってるんだ!」と怒鳴りつける上司がいると、大問題に発展します。
つまり、生活に支障が出るかどうかは、環境との相性によるのです。
体調やストレスによる
「生まれつき脳の働きがアンバランス」であることによって、発達障害の特徴、つまり、苦手なことが出てきます。
そのため、脳の調子がいいときは、脳の働きのバランスが悪くても、それなりのポテンシャルを発揮します。
だから、苦手なことも、そんなに目立たない!
一方、脳の調子が悪いときは、絶不調になってしまいます。
そうなると、苦手なことが前面に!
脳の調子を高めるのは、健康的で、ストレスフリーな生活。
言うまでもなく、脳の調子を悪くするのは、不健康で、ストレスフルな生活。
発達障害の特徴は、体調やストレスによって現れ方が違ってくるんです。
いかがでしたか?
今回は、
〇発達障害については、精神医学会が決めた診断基準があるけれど、発達障害の特徴は、だれでももっている、
〇環境や体調によって、発達障害の特徴が強く出るか、どう判断されるかが違うため、発達障害の診断があいまいになる、
ということについて、お伝えしました。
診断がつかなくても、診断基準を満たさなくても、発達障害の特徴をもつために、生きづらさを抱えることがあります。
発達障害についての知識を、あなたや周りの人を理解するために使ってくださいね。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。