対人関係に新しい視点をもたらす「ラビング・プレゼンス」
人と関わるとき、気を遣い過ぎて疲れてしまう…。
そんな私でしたが、「ラビング・プレゼンス」を続けるうちに、人との関わりがちょっとずつ楽になっていきました。
今回は、対人関係に新しい視点をもたらしてくれる「ラビング・プレゼンス」について、お伝えします。
「ラビング・プレゼンス」とは?
「ラビング・プレゼンス」は、もともとは、「ハコミセラピー」という心理療法で使われる手法です。
英語で「Loving Presence」と書きます。
直訳すれば、「存在を愛する」ということ。
目の前にいる相手の存在から、愛を受け取り、味わうのが、「ラビング・プレゼンス」です。
「ハコミセラピー」のセラピストは、「ラビング・プレゼンス」の状態に入ったまま、クライエント(相談者)に向き合います。
クライエントが、その人らしく、そのままに存在していることに、素晴らしさを感じながら、セラピーをおこなうのです。
とはいえ、「愛」を受け取る、って言われても、ピンときませんよね。
私もそうです。
なので、私は、「生命力」ととらえています。
目の前にいる人の「生命力」を感じ取り、それに敬意を感じながら、その人と一緒にいる。
相手の「良いところ」を頭で考えて探すのではなく、自分にとって必要だなあと感じた良いものを、相手からいただく。
私の「ラビング・プレゼンス」は、そんな感じです。
「ハコミセラピー」のセッションの根幹をなす「ラビング・プレゼンス」ですが、セラピー場面以外でも、めちゃめちゃ使えます。
特に、「人と関わるときには、相手に合わせちゃうから疲れる…」と感じるあなたには、超おススメ。
対人関係に新しい視点がもたらされます。
「ラビング・プレゼンス」の手順は簡単
「ラビング・プレゼンス」の手順は、いたって簡単。
慣れてくると、目を開けたまま、「ラビング・プレゼンス」の状態に入ることができますが、初めは、目をつぶって練習します。
「ラビング・プレゼンス」をおこなう対象を決める
初めは、知らない人に対して練習していきます。
知っている人だと、日頃の恨みつらみが出やすくなりますから…。
「ハコミセラピー」のグループワークでは、参加者に対しておこないますが、日常的には、街で見かけた人。
たとえば、
- カフェやレストランで見かけた人
- 電車で座っている人、立っている人
街中でやる場合、私は、優しそうな人、自分が好きなタイプの人を選びます。
ただ、あんまりジロジロ見ると、不審者だと思われるので、要注意。
「マインドフルネス」の状態になる
目をつぶって、ゆっくりと深呼吸をしながら、「今、この瞬間」に起きていることを感じていきます。
身体の感覚。
聞こえる音。
ふと浮かぶ、考え、など。
これが、「マインドフルネス」の状態です。
自分に言葉をかける
マインドフルネスの状態になり、心も身体も落ち着いてきたら、心の中で、次の言葉を自分自身にかけます。
このあと目を開けると、今の自分にとって必要な何かが流れ込んでくる。
私は、それを受け取り、いい感じを味わうことができる。
そして、「何が流れ込んでくるかな」と、ワクワクした気持ちをもちます。
一瞬、目を開く
自分に言葉をかけたら、パチッと目を開き、選んだ相手(知らない人)を、1秒ほど見ます。
そして、すぐに目を閉じます。
目を閉じたあとに、何も感じないとき、何も起こらないときは、パチッと目を開いて1秒見ることをくり返しても、OKです。
心地よい感じを味わう
目を閉じたら、心地よい感じが、自然にわき起こってくるのを待ちます。
心地よい感じが起こってきたら、どんな風に心地よいのかを観察しながら、味わいます。
心地よい感じは、人によって違います。
- 身体の感覚:温かい、柔らかいものに包まれる、身体の内側が何かで満たされていく、リラックスする、ホッとする、安心する、など。
- イメージ:光に包まれる、映像が見える、物語が展開するなど。
- 声や言葉を感じる:「そのままでいい」「頑張ってるね」など、言葉が浮かんだり、声が聞こえたり。
私の場合、「ラビング・プレゼンス」の練習をすると、イメージが展開されます。
最近、電車の向かい側の席に座っていた女性を相手に、「ラビング・プレゼンス」をやったとき。
となりのトトロのようなモフモフの雪男が、イメージの中に登場しました。
私はすかさず、イメージの中で、モフモフ雪男にぺったりとくっついて、癒されました。
「ラビング・プレゼンス」の注意点
「ラビング・プレゼンス」をやる前に。
このあと目を開けると、今の自分にとって必要な何かが流れ込んでくる。
私は、それを受け取り、いい感じを味わうことができる。
という言葉を、自分にかけてください。
始めたばかりの頃、「このあと目を開けると…」といった言葉かけずに、電車の中で「ラビング・プレゼンス」の練習をしたら。
亡霊のような恐ろしいものが襲いかかってくるというイメージが浮かび、ビックリ!!
とはいえ、自分に言葉をかけなくても、いい感じを味わうことができる人もいます。
「人からは、いい感じのものしか流れ込んでこない」と思っている人。
「ラビング・プレゼンス」をやることに慣れていて、身についている人。
私は、対人恐怖っぽいところがあるので……。
痛い目にあってからは、必ず、自分に言葉をかけてから、「ラビング・プレゼンス」をおこなっています。
あと、心構えが大切です。
「何も起こらないに違いない」と考えていると、何も起こりません。
最後に、気持ちが沈んでいるときなどは、新しいことに挑戦するエネルギーが出ないことがあります。
初めて取り組む時は、ちょっとエネルギーがあるときのほうが望ましいです。
人との関わり方に新しい視点を取り入れてみたいという、あなた。
ぜひ、「ラビング・プレゼンス」を試してください。
相手から良い感じを受け取ることができると同時に、自分を満たすこともできるので、人と関わることが楽になります。
慣れてくると、目を開けたままでも、「ラビング・プレゼンス」の状態に入れるようになります。
私も、スクールカウンセラーとして勤務する際、クライエント(相談者)や、情報共有をする学校の先生方に対して、「ラビング・プレゼンス」を実践中。
やり取りがスムーズに流れる感じがします。
とはいえ、人が怖い場合は、人間相手に「ラビング・プレゼンス」をおこなうときに、抵抗が出てくるのは自然なこと。
次の記事では、物に対する「ラビング・プレゼンス」について、お伝えします。
実は、物に対する「ラビング・プレゼンス」、おススメなんです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
※物に対する「ラビング・プレゼンス」については、こちら。
※「ラビング・プレゼンス」について書かれた本は、こちら。
高野雅司(2013)「人間関係は自分を大事にする。から始めよう」青春出版社
高野雅司(2018)「図解「人づきあいが面倒!」なときのマインドフルネス」青春出版社